100業種・5000件以上のクレームを解決し、NHK「ニュースウオッチ9」、日本テレビ系「news every.」などでも引っ張りだこの株式会社エンゴシステム代表取締役の援川聡氏。近年増え続けるモンスタークレーマーの「終わりなき要求」を断ち切る技術を余すところなく公開した新刊『対面・電話・メールまで クレーム対応「完全撃退」マニュアル』に需要が殺到し、発売即、重版が決まった。
本記事では、クレーム対応を長引かせてしまう原因となる「ある言葉」を、具体例とともに特別掲載する。(構成:今野良介)
●お客様は、なぜキレたのか?
クレーマーは、表情に出すか出さないかは別にして、たいてい怒りの感情を抱いています。したがって、クレームを円満に解決するには、まず何よりも先に相手をクールダウンさせることが前提になります。
ところが、不用意な一言で相手をヒートアップさせてしまうケースが後を絶ちません。
その代表的なフレーズが、「ですから」「だって」「でも」の3つです。
私は、これらを「D言葉」と名づけ、クレーム対応では絶対に封印するように、クライアント企業の方々にお伝えしています。
1つ、事例をご紹介します。
---役所の事例---
役所の住民窓口で、年配の女性がイライラしている。
「さっきも言ったでしょ。私は証明書がほしいの!」
担当者は、困惑しながら「はい、それはよくわかりました。そのためには必要書類を揃えてお持ちくださらないと手続きができないんです」と答える。すると、女性が言った。
「ここにあるじゃない!」
女性は1枚の紙片を担当者の目の前に突き出した。
今度は担当者が言い返した。
「ですから、何度も申し上げますが、これだけではダメなんですよ」
「その言い方は何?バカにしてんの!」
(了)
このケースでは、「ですから」というワンフレーズで、相手がキレてしまったわけです。
これは、単に「言葉づかい」の問題として片付けられることではありません。「『だから』ではなく、『ですから』と丁寧語を使っているじゃないか」と思われるかもしれませんが、担当者の「意識」が言葉にはっきりあらわれているのです。
「D言葉」は、相手にとって、次のように伝わるのです。
・「ですから」……<そんなこともわからないの?>という「上から目線」
・「だって」………<そんなことを言われても困る>という「逃げ腰」
・「でも」…………<それは違うんじゃないの?>という「反抗的な態度」
数年前に、タクシー乗務員への暴力行為が頻発し、マスコミでもさかんに取り上げられました。私もタクシー会社から依頼を受けて、トラブル防止のためにアドバイスしたことがあります。そのとき、ある1台の車載カメラの映像を見て「やっぱり」と思いました。
やはり、「D言葉」を使っていたのです。