「ワーキングプア」という言葉が広まったのは、2006年のNHKスペシャルがキッカケだった。『高校生ワーキングプア』は同じNHKスペシャル取材班の本。17年2月に放送された「見えない“貧困”」の書籍版である。

 冒頭から衝撃的だ。〈今、家計を支えるために働かざるを得ない子どもたちが増えている。働かなければ、学べない──それどころか、食べていくこともできない子どもたちが増えているのだ〉

 高校生のアルバイトが、お小遣いで足りない分を補うとか、欲しいものを買うために貯金するとかの手段だったのは昔の話。

 高校生がバイトをする理由の多くは「家族のため」「親にこれ以上負担をかけたくない」からだ。根底に横たわるのは親の貧困だけれども、高校に入ると、教育費の負担が途端に増える。子どもにかかる教育費(部活の費用や文房具などを含む)は、小学生で月約1万6千円。高校生では約7万9千円。児童手当もなくなる。

 千葉県の公立高校が16年に実施したアンケート調査によると、バイトをする高校生は全体の約4割。うち44%が週4日以上働いている。使い道は友だちとの交友費、携帯代、食費、参考書代などで、要は高校生活を送るための必要経費。お小遣いはもらえなくて当たり前。高校生の多くは、けなげにも〈自分にかかる費用は自分で稼ぐものだと思っているのだ〉。

 部活もできない。旅行もできない。本も買えない。率直にいって、高校生にこんな生活を強いる国にもはや未来はないよな、だ。

 高校を卒業しても待っているのは奨学金地獄。かつて1割程度だった大学生の奨学金受給率は14年度で51.3%。背景には親の所得の減少に加え、授業料の高騰がある。かくて子どもたちは18歳にして借金を背負い、大学でもブラックバイトに明け暮れる。

 こんなことになったのは国の失政以外の何物でもない。民主党政権時代の高校授業料無償化は、安倍政権になって改悪された。丁寧に取材された本だけど、政治の責任を問う姿勢が薄いのだけが不満。

週刊朝日  2018年4月27日号