●リスクを取らなくていいのは「お金持ちだけ」

「でも、利回りが高いということは、リスクがあるということですよね? 元本割れするようなリスクを取れるほどお金持ちじゃないから、預金を選んでいるんですよ!」

 みなさんのそんな声が聞こえてきそうです。しかし、それはほんとうでしょうか?

 たとえば、もしあなたのご家庭が、月8~9万円の積立額を継続できるほど豊かなのであれば、利回りゼロの預金だけでも3000万円は貯められます。

 しかし、もしそれ以下の積立額しか出せないのであれば、「利回りを上げる」以外に、何か目標達成の方法があるでしょうか?

 そう、「元本割れのリスクを取れるのはお金持ちだけだ」というのは、日本人の典型的な思い込みです。むしろ、真実はこれと正反対であり、「元本割れのリスクを取らなくていいのは、利回りがゼロでも十分貯められるお金持ちだけ」です。

 お金が無尽蔵にあるわけではない“ふつうの人”は、それなりのリスクを取りながら、一定の利回りを確保していかない限り、最低ラインと言われる3000万円すらつくることができないのです!

 ……という話をすると、日本人の多くの方は震え上がります。「リスク」という言葉にアレルギーがあるため、「リスクを取るしかない」と言われると、途端に思考停止してしまうのです。リスクについてはまた後述しますが、じつはみなさんがイメージされているような恐ろしいものではありません。

 たとえば、会社に出勤するにしても、ハイヤーでの送り迎えがあるエグゼクティブなら道を歩かずに済みますが、そうではないふつうの人は、駅までの道のりでクルマに轢かれるリスクがあります。自転車に乗れば転ぶリスク、人身事故のせいで電車が遅れるリスクなども取らねばなりません。

 ハイヤーがある人だって交通事故に遭うリスクはゼロではありませんし、家から一歩も出なくてもいい大富豪でも、大地震や強盗のリスクが完全に消えることはないでしょう。

 要するに、私たちはみな、取らねばならないリスク、取るべきリスクはすでに取りながら生きているのです。

 いかがでしたでしょうか? 預金だけでは“足りない”以上、一定のリスクを取った運用が必要になるということはおわかりいただけたと思います。なんだか損をしたような、がっかりした気持ちになった人もいるかもしれませんね。

 しかし、ファイナンシャル・プラニングの観点から冷静に考えれば、「預金だけ」のほうが間違いなく損であり、“もったいない”ということが見えてきます。これが預金にまつわる第2の事実です。次回はこれを詳しく見ていきましょう。

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