●生活費6ヵ月以上の預金は「貯めすぎ」である
私たち日本人は世界でも屈指の預金好きです。金融資産の51.5%という大きな割合が現預金で占められているのは、先進国では日本くらいでしょう。日本人のコツコツ貯める粘り強さは、世界に誇れるものだと思います。
ただし、ゼロ金利の時代が長く続いている日本では、預金には「お金を生み出す機能」がほとんどありません。つまり、資産形成エンジンとしては役に立たないというのが実情なのです。その結果、コツコツと預金をする日本人の「粘り強さ」が、かえってアダになってしまっている側面もあるのです。
預金の最大の機能は、現金とほぼ同等の流動性、つまり、必要なときにいつでも支払いに使えることです。銀行のATMに行けば、すぐに現金として引き出せますし、スマートフォンを操作するだけで、ほかの人にお金を送ったりすることもできます。
この本来の機能に立ち戻った場合、全資産の50%以上を預金で持っておくのは、どう考えても賢明ではありません。預金額は「現金アクセスが必要になりそうな程度だけ」に抑えておき、それ以外はほかへ回すのが合理的でしょう。
「現金アクセスが必要になりそうな程度」を考えるときに、私が実際のマネーアドバイスで目安としてお伝えしているのが、「基本生活費の6ヵ月分」という数字です。
基本生活費とは、最低限の生活をしていくのに必要なコストのことで、レジャーや趣味などのいざというときにカットできる分は除きます。「急に働けなくなった」「車が故障して修理費がかかった」「屋根が壊れて対処が必要になった」など、なんらかの不測の事態が起きたときでも、基本生活費の6ヵ月分があればまず慌てずに済みます。預金はあくまでも「緊急時のためのプール金」なのです。
言い換えれば、6ヵ月分を上回った預金額がある家計は、端的に“貯めすぎ”です。預金が持っている本来の機能を果たせずに遊んでいるお金があるということですね。
もちろん「6ヵ月」はあくまで目安ですから、持病を患っていて働けなくなる可能性が高い方、薬や治療代がかさむ可能性が高い方、親御さんの介護が必要な方は、この緊急費用をもう少し多め(たとえば9ヵ月分、12ヵ月分)に設定しておくといいでしょう。肝心なのは、そのラインを自分なりに定めておくことです。
また、「家の外壁の定期的な塗装」だとか「クルマの買い替え」などの費用に「緊急時のためのプール金」をあてるのは間違いです。なぜなら、これらのコストは発生することがあらかじめわかっているからです。短・中期的に見通しがつく費用は、定期預金に入れるなど、別枠で貯めておくといいでしょう。これは“貯めすぎ”にはカウントされません
なお、がんばって節約をしてコツコツと預金してきたのに、貯めすぎと言われてしまった方も(ちょっとショックかもしれませんが……)心配は無用です! そのお金は、これからパワフルな資産形成システムをつくっていくときに、必ず役に立ちます。その詳しい方法は書籍『お金が勝手に貯まってしまう 最高の家計』でもご紹介しておきました。