1976年創刊、独自の企画が光る「本の雑誌」。同誌で働く社員3人組による、出版業界の探検日記だ。訪問先は出版社、古本屋、図書館といった定番どころから、流通センターの倉庫、文壇バーといった場所も。目次を見るだけでもじゅうぶん楽しい。
ユーモラスな文体を通して、本の世界で生きる人々の「温度」が伝わる。過去には村上春樹や開高健といった大御所も利用したという、作家のカンヅメ施設「新潮社クラブ」。現在も利用希望者は後を絶たず、先々まで予約で埋まっていることが少なくないそうだ。また山形では20年近い歴史を誇る小説家養成講座が開催されており、東京からの遠征者、10回以上の参加歴を持つなど、高い意気込みを持った受講生の声が紹介される。じわじわと本を読むことの希望が湧いてくる一冊。
※週刊朝日 2017年7月14日号