3点目の課題が、これがいちばん厄介そうなのですが、経験値です。英検4級は中学中級程度の難易度らしく、登場する場面や話題も中学生以上向けに設定されている印象です。ゆえに小学校2年生の世界には存在しない単語が時々登場するのです。具体的に娘が「これどういう意味?」と訊いた単語が、report(名詞のレポート)やmeeting(会議)。「レポートっていうのはね、何かをよく調べて誰かに教えるものだよ。ほら、調べ学習ってあるでしょ? あれで先生に渡すノートや画用紙のこと」などと小2向けに説明をひねり出しながら、語彙の幅がないことは盲点だったなと反省しました。
語彙の壁は、英語だけではなく日本語にも存在しました。問題文の漢字にはすべてフリガナが振られているとはいえ言い回しが小2には難しいらしく、娘が発した言葉が「筆記用具って何?」。そうか、筆記用具がわからないか……! と衝撃を受けつつ、そりゃそうだよなと「エンピツのことだよ」と教えたのでした。
登場する場面も、小2、というか最近の若者にはイメージしづらいだろうなと感じることがあります。たとえば電話での応答。Aさんが「Bさんいますか?」と尋ね、Cさんが「Bさんはあいにく電話に出られません」と答える場面は、固定電話が当然の時代ならよくあるシチュエーションですがスマホ時代の今はなかなか遭遇しないのではないでしょうか。また、毎年のように過去問に登場しているEメールの形式(差出人、宛先、日付、件名が書かれ、本文もDearやHiから始まる長文)も、今時の若者は全部ソーシャルメディアでやり取りするから見たことないんじゃないかな~と思ったり。いや、今時の若者とやり取りしないのでわからないんですけども。
というわけで個人的に出した結論は、まあ英検、小学校低学年のうちは無理に受けなくてもいいんじゃないかな、でした。英検の前にもっと身に着けるべき能力が色々とあることを痛感したのです。思えば日本生まれ日本育ちの私でも、大学時代には読解に苦労していたビジネスやアメリカの歴史経済に関する文章などは、今読むと不思議なくらいすんなりと頭に入ってくることに気づきます。それは英語力が向上したわけではなく、実際の仕事やアメリカ生活を経験することで、単なるアルファベットの羅列に過ぎなかった英単語に実感が伴ったからなのでしょう。小2の娘に関しては、今のところ本人は英語を使うことを楽しんでいるようだし、英語を手段としてもっと広い世界を見させてあげるのがいいだろうと思っています。reportってスペルを10回練習するより、1回でもレポートを実際に書いた方が頭に残るでしょうしね。
※AERAオンライン限定記事
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