取材の待ち合わせ場所に紺色のノースリーブのツーピースで現れた河井あんりさん。有罪判決の確定後は外出できず、家族が買ってきたケーキを食べ続けた結果、4年間で20キロも太ったという。レストランではトンカツを選び、「共食い」と言って笑った=2025年7月、東京都内、大崎百紀撮影
取材の待ち合わせ場所に紺色のノースリーブのツーピースで現れた河井あんりさん。有罪判決の確定後は外出できず、家族が買ってきたケーキを食べ続けた結果、4年間で20キロも太ったという。レストランではトンカツを選び、「共食い」と言って笑った=2025年7月、東京都内、大崎百紀撮影
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 2019年の参院選をめぐる地元議員らの大規模な買収事件で、夫の河井克行・元法相(62)とともに公職選挙法違反(買収)の罪で有罪判決を受けた元参院議員の河井あんりさん(51)が6月、『天国と地獄』(幻冬舎)を出版した。これまでに語ることがなかった「事件」を振り返り、「司法には闇がある」と言う案里さん。「社会的に意義のある仕事をして、信頼を取り戻したい」と踏み出した歩みについて語った。

【写真】今とどこか違う…2019年の参院選で笑顔で街頭演説する河井あんり氏

(前編の「夫を『恨みたいけど恨めませんよ』 元参院議員の河井あんりさんが語る周囲の『なぜ離婚しないのか』に対する“答え”」はこちら

*   *   *

――2019年の参院選をめぐり、翌年に公職選挙法違反(買収)の疑いで逮捕されました。

 選挙活動中の「ウグイス嬢」の報酬は当時、法定価格で日当1万5千円だったのですが、私の陣営では3万円を支払っており、それが「運動員の買収」だと週刊誌で報道されたことが始まりでした。そして、私の陣営が現金を配っていたとして、広島の自宅と事務所、東京の事務所と議員宿舎にも強制捜査が入りました。

 何のことなのかと夫に問い続けましたが、夫は「知らなくていい」の一点張りで、私は自分が何に巻き込まれているのかわからず、とても怖かった。

 そして逮捕される3日ぐらい前に、「ひょっとすると案里さんも逮捕されるかもしれない」と弁護士から言われました。私は捕まるようなことはしていない自信があったので、すごく冷静でした。実際に逮捕されたときは、「今、手錠をかけられたな」「腰縄をかけられたな」というように客観視していました。
 

司法には大きな闇がある

――拘置所での生活は、4カ月半続きました。

 逮捕前日の夜、議員宿舎の会議室で菅義偉・元首相(当時は官房長官)にお会いしたんです。秋田から上京して今に至るまでにどんな苦労をされたのか、ご自身の生い立ちを話してくださいました。そして「つらいことはいろいろあった。でも苦しいことには必ず終わりがあると思ってやってきた」とおっしゃったんです。この言葉が、拘置所の中での私の心の支えとなりました。

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