
私が拘置されていたフロアには66部屋あり、これだけの部屋を回って身の回りの世話をする刑務官は大変だろうと思って、日々、刑務官に感謝の気持ちを伝えようと決めました。感謝の気持ちを持つこと、なるべく自律的、能動的に生活すること。この2点は、拘置所で心がやられてしまわないために自分で立てた方針でもあったんです。
――これまで事件について語ってきませんでした。今回、本として書いたのはなぜでしょうか。
自分の選挙に問題があった以上、その全てを自分ひとりで引き受けなければと思ってきました。この本を書くまで、事件について語ることも避けてきたんです。事件の背景には実はいろんなこともあったけれども、それを語るのは自分を正当化するようでみっともないし、私のポリシーに反する。墓場まで背負っていくことがノブレス・オブリージュであると思ってきたんです。
事件のことをどのように語るか深く悩みましたが、検察の取り調べの実態については、わが国の検察制度のあり方についての問題提起でもあるので、触れないわけにはいかないと思いました。
買収罪というのは、お金を渡した人と受け取った人(被買収者)が共犯関係にありますが、私の事件で検察は被買収者の全員を不起訴としたのです。
さらに、検察が被買収議員に対して、不起訴にすると約束する代わりに、脅したりおだてたりなだめたりして、検察の意に沿った供述をするよう誘導し、供述内容を変えさせて調書を作成した様子が明らかになりました。
(※編集部注 その後、検察審査会が買収されたとされる35人を「起訴相当」と議決し、うち9人が在宅起訴、25人が略式起訴されることになった)