
「医食同源」という言葉があるように、病気を治療するのも日常の食事をするのもともに生命を養い、健康を維持するために不可欠なものです。実際に、漢方では「薬膳」といって、症状やからだの状態に合わせて食材を組み合わせた食事を摂ろうという考え方があり、病気の治療や健康法の一つとしてとり入れられています。30年超にわたり漢方診療をおこなう元慶應義塾大学教授・修琴堂大塚医院院長の渡辺賢治医師は、「メンタル面を安定させるために必要なのは、『天然の精神安定剤』と言われるビタミンやミネラル」と話します。
メンタル不調に対して漢方という選択肢もあるということを、より多くの人に知ってもらいたいと、渡辺医師は著書『メンタル漢方 体にやさしい心の治し方』(朝日新聞出版)を発刊しました。同書から抜粋してお届けします。
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さまざまな食材を意識して中庸を目指す
食事もメンタルと非常に深く関わります。ストレスによって自律神経のバランスが乱れると、胃腸の働きが低下して、体重が一気に落ちるという方もいます。また、おなかがすくのは副交感神経の働きによるものです。交感神経が優位な緊張状態が続くと、食欲も低下します。こうしたときには、脂っこいものは避け、なるべく消化のいい食事をおすすめしています。
一方、食生活がメンタルに影響を与えることもあります。忙しいときにはつい丼ものやパスタ、カレーライスなど糖質メインの一品料理に頼りがちになりますが、メンタル面を安定させるために必要なのは、「天然の精神安定剤」と言われるビタミンやミネラルです。
カルシウム
身体機能の調節、維持に必要なミネラルの一つで、興奮した脳神経の作用を抑えると言われています。牛乳、ヨーグルト、チーズなどの乳製品や小魚、豆腐、納豆、海藻などに多く含まれています。干しシイタケ、イワシ、サケ、バナナなどに含まれるビタミンDと一緒に摂ると、カルシウムの吸収がアップします。
