例えば、顧客とトラブルに発展しそうな局面で、「今こんなことが起きているんですけど、どうしたらいいですか?」とSOSのメッセージがテキストで送られてきたこともあったという。

「さすがにあの時は、『こんなのはチャットじゃなく、いの一番に直接声をかけて』と強い口調で言いました。すぐに対応しないといけないのに、チャットだと返信や確認が後回しになってしまう危険性もありますよね」(小澤さん)

 一方で、多いのは「お客さんへの対応はこれでよかったですか」という若手からの事後の確認や報告。すぐ近くの席で仕事をしている時も届くが、これは「問題を感じない」と小澤さんは言う。

「チャットのいいところはエビデンスが残るということです。クライアントとのやりとりもテキストの形で残しておいたほうが事後トラブルを回避できるメリットがあります」

 要はケース・バイ・ケースということだ。小澤さんは言う。

「時間に余裕がある時に返信してもらえればいいというニュアンスがくみ取れると、相手に対しての配慮と受け取ることもできます。書き出しに『隣にいるのにすみません』といった断りや、『お時間が空いてる時でいいのでご返信いただければ』といった言葉が添えてあると配慮のある若手だなと感じますね」

 ただ、テキストでは微妙なニュアンスや感情が伝わりにくい面もある。小澤さんは「使い分け」をすすめる。

 今、このタイミングで直接顔を合わせて伝えたほうが、ぐっと距離を近づけられると感じた時はリアルで会って話してみる。オンラインで相手の顔を見て話すぐらいがちょうどいいというシーンもあれば、チャットで完結できるタスクや関係性もある。

「コミュニケーションの選択肢が広がった時代だからこそ、若手に限らず戦略性を持ってツールを使い分けていくことが求められます」

 世代間のチャットのコミュニケーションギャップを埋めるカギもここにある、と小澤さんは言う。

「若手は『チャット依存』から脱し、管理職もチャットのメリットに自覚的になることで、双方がストレスなく交わせるコミュニケーションのタッチポイントが増えるはずです」

(AERA編集部・渡辺豪)

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