
退職時に引き継ぎを拒んだり、会社の悪口をSNSに書き込んだりする「リベンジ退職」。元社員の「リベンジ」に悩む企業も多いという。最近の傾向は。対処法はあるのか。
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「今まさにその境地にいます」
こう吐露するのは「リベンジ退職」の経験者を募ったAERAのアンケートに、「予備軍」としての思いを寄せた、関西地方の建設会社に勤務する50代女性だ。
「今すぐに辞めるつもりはありませんが、退職時は私が業務中に作った書類をすべて破棄、もしくは改ざんして辞めるつもりです」
何があったのか。
女性は先日、上司との面談で「あなたは何をしているのか。成果が見えない」と叱責を受けたという。業務にはこつこつ向き合ってきた。なのになぜ、こんな言われ方をされないといけないのか。女性は怒りが収まらない様子でこう振り返った。
「長々と一方的に文句を言われました。その場は黙ってやり過ごしましたが、内心では『私が? なんで?』という気持ちと、そういうふうに見られているのなら、『よし分かった、あっそ!』と見切る気持ちが同時に湧いてきました」
女性は上司から非難を浴び続けたことで、こんな「リベンジ」を決意したという。
「私がラベルまでつけて丁寧に作成した大きなファイル3冊分の紙の書類があります。同じ内容のものをパソコンのフォルダにも保存しています。これがないと業務は進みません。この書類をすべて廃棄するか改ざんしてから辞めてやる、覚えておけよ、と」
万一女性が退職時に実行し、企業側が損害賠償請求に出た場合、どんな結末が予想されるのか。
「この『書類』が個人的な手控えではなく、業務として作成した文書であれば、退職時に破棄や改ざんをすると、思わぬ高額の損害賠償を請求されるケースがありますから、よくよく考えてから行動されることをおすすめします」
こう注意喚起するのは、労使トラブルに関する訴訟に詳しい西川暢春弁護士だ。今年1月の徳島地裁判決を参考判例に挙げる。
メーカーの開発業務を担当していた従業員が会社のサーバー内に保存した装置の操作手順書や実験データなどの電子ファイルを退職日に削除したという事案。これに対し、会社が元従業員とその身元保証人である妻や母に約2580万円の損害賠償を請求した訴訟で、地裁は元従業員と身元保証人に約580万円の損害賠償を命じた。西川弁護士が補足する。