「伝説の相撲ジャーナリスト」杉山邦博さん(photo 倉田貴志)
「伝説の相撲ジャーナリスト」杉山邦博さん(photo 倉田貴志)

琴桜は昨年とはまったくの別人のよう

 どうしちゃったんでしょうねぇ……、ほんとうに。昨年の九州場所、14勝1敗で優勝したときの彼とは、まったく別人のようです。受け身の取り口ばかりで、かつ相撲が遅い。なぜこれほど精彩を欠いているのか、信じられないくらいの気持ちです。今場所は弟弟子の琴勝峰(前頭15枚目/13勝2敗)が優勝しました。琴勝峰がこの先、がんがん稽古を重ねたら、琴桜を追い越してしまうかもしれない。「これはうかうかしていられない」と、お尻に火がつく思いでがんばってほしいと思いますよ。

──今場所は琴勝峰のほかにも、安青錦(前頭1/11勝4敗)、草野(前頭14/11勝4敗)が優勝争いを引っ張る展開で、躍動しました。長い間、大相撲を取材してこられた杉山さんに、いまの大相撲はどう映りますか。

 面白いねぇ。非常に面白い。いまの相撲界は、まさに「戦国時代」ですよ。そんな中で、相撲界入りから2年を過ぎた大の里の強さが、どれくらい安定してくるか。優勝候補といえば真っ先に名前があがる存在であることは間違いない。そんな25歳の横綱とほぼ同い年の、草野や琴勝峰、そして今場所負け越したものの目をみはる相撲もあり、やはり将来性を感じさせた王鵬(前頭2/7勝8敗)がどれだけ伸びてくるか。今年の秋場所から九州場所にかけて、戦国の地図の様相がまたガラッと変わってくる予感がします。今後しばらく、大相撲からますます目が離せませんよ。

(聞き手/AERA編集部・小長光哲郎)

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