
横綱・大の里への注文は「勝ち急がない」
もう一つ、踏み込んで右を差すまではいいんだけれど、左上手を取るのが遅すぎること。しっかりと左上手を取るまでは、勝ち急がないこと。これが横綱・大の里に対する私の注文です。
──横綱の相撲っぷりも注目でしたが、前回の取材で杉山さんは今場所の最大の見どころとして、「大関争い」を挙げていました。
大関という存在は、大相撲の世界では東西に必ずいなければならないもの。これは100年以上にわたる大相撲という伝承文化の、ひじょうに大切な部分なんです。大の里が抜けてそこに現状では一つ、空きがある。昇進の条件も多少、甘くなる。今場所は誰かがこの大関の座をつかむ、絶好のチャンスだったはずでした。
「大関取り」が叶わず残念
ところが、まず誤算だったのは、次の大関昇進の可能性がもっとも堅いと思っていた大栄翔(関脇/全休)が、場所前にふくらはぎの筋肉断裂で初日から休場したこと。そしてライバルの若隆景(関脇/10勝5敗)も、場所前半に食あたりでかなりの重症だったんです。彼はそれをおして土俵に上がりましたが、7日目を終わって3勝4敗。夢はついえたかに思えましたがそこから盛り返し、何とか2けた勝ったのは「次」につながる収穫でした。かりに14日目に大の里にも勝っての11勝なら、私は大関にしてもよかったと思いますが、残念ながら横綱には一方的に敗れてしまいました。
もう一人、大関経験者の霧島(関脇/8勝7敗)も、11勝すれば大関の目はあったと思いますが、後半息切れしました。いちばん注目された「大関取り」が今場所でかなわなかったのは、相撲ファンとして非常に残念でしたね。大相撲はやはり、大関が東西にきちんとそろってほしいなというのが、私の率直な気持ちです。
──残念といえば、現状でただ一人の大関、琴桜(8勝7敗)はぎりぎりの勝ち越し、でした。