
熱海富士は「ちゃんとほめないと」
──今場所目立った力士としては、熱海富士(前頭10/11勝4敗)も終盤まで優勝争いにからむ活躍でした。杉山さんは過去のAERAの取材で「いちばん注目し、そしてがっかりしている力士。苛立ちさえ感じています」と厳しい言葉をかけておられました。
いやぁ……今場所はちゃんとほめないといけないね(笑)。ここ数場所、期待外れに終わっていた彼が、2場所連続で優勝争いを演じた2023年(秋場所、九州場所)の頃の相撲を思い出したようでした。あっさり負ける相撲が気になっていましたが、今場所はよく粘って我慢する相撲もあった。まだ22歳。今後もぜひ上位陣を脅かす存在になってほしいと思いますね。
──もう一人、忘れてはならないのが敢闘賞を受賞した藤ノ川(前頭14/10勝5敗)ですね。
立派でした。体は小さいけど(176センチ、117キロ)、土俵狭しと暴れまわってね。しかもただ動き回るだけでなく、土俵際の粘りもすごい。千秋楽、10勝することが条件だった敢闘賞をかけた一山本(前頭8/9勝6敗)との一番でも、猛烈な突っ張りの応酬の中で押し負けなかった。いい根性してますよ。まだ20歳。彼も含めて、「世代交代が進んでいるな」ということを顕著に感じさせる場所でしたね。次の秋場所も、ぜひ若い世代の力士の相撲に注目していただきたいなと思います。
(聞き手/AERA編集部・小長光哲郎)
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