
7月27日に千秋楽を迎えた大相撲の名古屋場所。新横綱・大の里が注目されるなか、優勝したのは平幕の琴勝峰だった。元NHKアナウンサーとして数々の名実況を残し、70年にわたって大相撲を取材してきた伝説の相撲ジャーナリスト・杉山邦博さん(94)は、安青錦や草野ら若手が席巻した波乱の場所をどう見たのか。(前後編の前編/後編はこちら)
【写真】波乱の大相撲名古屋場所を制したのは25歳の平幕・琴勝峰
平幕力士たちが躍動
──今場所は何といっても、平幕力士たちが躍動しました。
優勝した琴勝峰(前頭15/13勝2敗)と、最後まで優勝争いを演じた安青錦(前頭1/11勝4敗)、草野(前頭14/11勝4敗)の3人は、絶賛していいほどの活躍でした。
琴勝峰は190センチで167キロと体の大きさもあるし、何よりも相撲に取り組む姿勢が前向きなんです。すぐに引いたりなど姑息な手段はとらず、地道に、とにかく正攻法で前に出る。それが彼のいいところ。足の故障で2度、十両に落ちた経験もあるので心配されていたのですが、よく頑張りました。ただ、ひじょうに地味というか、相撲があまり印象に残らないんですよね。観客を引きつける魅力がいまのところ感じられない。これからどう変わっていくか、期待して注目したいですね。
姑息な取組が一番もなかった
その点、安青錦は毎日、観客を引きつける相撲をとっていました。彼の良さは絶対に引かないこと。そして、「左を差したら負けない」こと。逆に14日目の草野、15日目の琴勝峰との対戦では相手に右を差されたことが敗因になりました。来場所は三役が確実ですが、相手が彼の左をどう封じてくるかが今後の大きなカギになると思います。
草野は十両で2場所連続優勝しての新入幕でしたが、最後まで優勝戦線に残り、逸材であることをあらためて証明しました。内容も攻めの相撲ばかりで、姑息な取組が一番もなかった。大物ですね。