7月の名古屋場所で、琴勝峰(右)は突き落としで安青錦を破り、初優勝を決めた
7月の名古屋場所で、琴勝峰(右)は突き落としで安青錦を破り、初優勝を決めた

──大物、ですか。番付としては今後どれくらいまで上がっていくでしょうか。

 草野は、いずれ大の里を追っかけ、追いつき、並んで時代を背負っていく存在になると思います。来年は間違いなく、大関になり、そして横綱を目指す年になるでしょう。

 安青錦もそうです。次の秋場所(9月14日から)で13勝でもしようものなら、早ければ九州場所(11月9日から)が、「大関取りの場所」になる可能性もじゅうぶんあります。

35歳のベテラン力士・高安の活躍光る

──若手が活躍する一方で、今場所はベテランの活躍も光りました。元大関の高安(小結/10勝5敗)は、安青錦と草野をいずれも力強く退けたのが印象的でした。

 想像以上の活躍で、大いに評価してほめていいと思います。もう35歳の力士が、安青錦は豪快な上手投げで、草野は突っ張りで圧倒した。いやぁ、すごかったねぇ。逆に草野にとっては、「やはりプロの世界は容易ではないな」と思い知らされた、意味のある負けだったとも思います。

 もう一人ベテランで忘れてはならないのが、40歳の玉鷲です(前頭4/11勝4敗)。立派でした。相撲内容が素晴らしかった。とくに千秋楽の欧勝馬(小結/3勝12敗)との一番。猛然と突っ張ったけど、四つ相撲を得意とする小結相手に四つ身になった。ここで万事休すかと僕は思ったけど、相手の寄りを3回も残して、最後は寄り切った。その根性、執念に敬服しました。

 取組後に会ったとき、彼から歩み寄ってきてくれて、握手しましたよ。うれしそうでしたね。実は13日目頃、三賞(殊勲賞、技能賞、敢闘賞)の選考委員の幹事に、「玉鷲に殊勲賞あげなさいよ」と僕は言ったんです。千秋楽のあの相撲を見たら、殊勲賞をとったことに誰も異論はないでしょう。

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