
7月に行われたテストマッチでは欧州の強豪ウェールズに12年ぶりの勝利を挙げるなど、盛り上がりを見せる日本のラグビー。チームの中心として活躍する多くの海外出身選手たちの選手登録をめぐる「ある規定変更」が議論を呼んでいる。何が問題か。元ラグビー日本代表の平尾剛さんは「最悪のタイミング」と危機感を募らせる。
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「日本のラグビーにとって大きな『後退』だと思います。評価できる点は何一つない。平尾誠二さんが聞いたら、『何やってるんだ、誰のおかげでここまで強くなれたんだ』と声を荒らげて怒ったでしょうね」
2016年に亡くなった「ミスターラグビー」の思いをこう代弁するのは、所属チームの神戸製鋼で指導を受けるなど公私ともに付き合いがあった、元ラグビー日本代表の平尾剛・成城大学教授(50)。怒りの矛先は、ラグビーのリーグワンが5月に発表した2026~27年シーズンからの選手登録の規定変更。幅広く受け入れてきた海外出身選手の出場機会を減らすことになる内容に、疑問の声がくすぶり続けているのだ。どんな変更なのか。
最も注目されている点は、これまでなら日本出身ではなくても日本代表実績または資格がある(日本のチームに48カ月以上継続して選手登録されるなど)といった条件で分類されていた「カテゴリA」を「A-1」「A-2」の二つに分けたことだ。
「小中9年間のうち6年以上を日本で過ごした選手」などが分類される「カテゴリA-1」を新たに設け、チームの登録メンバー23人中14人以上、フィールド上に同時に立つ15人中8人以上をこの「カテゴリA-1」から出すように変更するという。
日本ラグビーになくてはならない海外出身選手
いま、日本のラグビーにとって海外出身選手はなくてはならない存在だ。7月5日、北九州で行われた強豪ウェールズとのテストマッチで12年ぶりの勝利を収めた試合でも、先発メンバー15人中7人が海外出身選手だった。規定が変更されれば、いま日本ラグビーの中心的役割を担い、ファンを楽しませている多くの海外出身選手は「A-2」に分類され、結果的に「出場枠を狭められる」ことになりそうなのだ。
なぜ、リーグワンはこのような変更を決めたのか。目的についての説明はこうだ。「日本国内の若年層の競技者が参加意欲を高め、国内の競技人口増加、そして日本ラグビー全体の普及と発展に寄与することを目指します」。平尾教授はこう解釈する。