
狙いは「日本出身選手の出場機会を増やすこと」
「海外出身選手ばかりでは応援しにくい。もっと日本出身選手の活躍が見たい──明確に抗議があったわけでもないそんな『空気』を読むことが、競技人口や観客数の増加につながると考えたのでしょう。狙いが『日本出身選手の出場機会を増やすこと』にあるのは明らかだと思います」
たしかに、能力の高い海外出身選手に押され、日本出身選手はリーグワンでの出場機会も、そしてその先にある日本代表の座もなかなか得られない。そんな現状はある。でも、だからといって「出られないならラグビーやめちゃおう」と思う選手がどれだけいるか。元選手として、平尾教授はそこに疑問を感じるという。
「より高いレベルの選手たちが集まる中で切磋琢磨できる。プレーする側としてはそのほうが面白いはず。規定を変更した側と現場にいる選手たちの感覚にはその点で温度差があるのではないかと感じます」
そもそもなぜ、平尾教授の口から故・平尾誠二さんの怒りを代弁する言葉が出たのか。多くの海外出身選手が日本のラグビーで活躍できる、その道を開いたのが1999年のラグビーW杯ウェールズ大会で日本代表を監督として率いた平尾誠二さんだったのだ。ただし、平尾誠二さんの意図は、「海外出身選手の力を借りて勝ちたい」という文脈ではなかった。平尾教授はこんな言葉を覚えている。
海外トッププレーヤーとの化学反応で強くなる
「同じチームに海外出身のトッププレーヤーがいると、化学反応が起きる。日本出身の選手が『まだ見たことのない世界』を見ている人がチームメートとして入ってくることで、長い目で見て日本ラグビーのレベルが上がるんだと。そこは明確に意識されていました」
その切磋琢磨の場が減ることは、日本ラグビーが「いまより強くなれない」ことにもつながると、平尾教授は危惧する。
「同じ土壌で、レベルの高い選手たちが同じ条件でレギュラー争いをすることに意味があるんです。今回の規定変更で日本出身選手がいわば『優遇』されることで、切磋琢磨する土壌自体がやせ細ってしまい、長い目で見ると日本ラグビーの伸び悩みにつながってしまうかもしれません」
そもそも、これまで日本ラグビーに「海外出身選手が多すぎた」という前提は正しいのか。平尾教授は、「日本だけに海外出身選手が多いわけではない」ということは忘れてはいけない点だと話す。