今年も暑い夏がやってきた。熱中症対策は必須だ(photo gettyimages)
今年も暑い夏がやってきた。熱中症対策は必須だ(photo gettyimages)

日傘を差すかどうかは本人が決めること

 だが、新渡戸文化学園理事長で、放課後NPOアフタースクール代表理事の平岩国泰さんは、「日傘使用の『可否』を大人が議論すること自体が行きすぎた考え」と指摘する。

「雨の日に傘を差すかどうかを本人が決めるのと同様、日傘の使用は子どもの健康や個人の権利に関わる問題です。特に、これほどの猛暑の中で日傘を禁止する権利は、大人にはないと思います」

 例えば、プールの授業で紫外線防止などを目的とした「ラッシュガード」も、かつては着用禁止のところもあったが、今では禁止できない流れになっている。日傘についても、熱中症を心配したり日焼けをしたくないという個人の希望があったりすれば、大人側が「ダメ」と言う合理的な理由はない、と平岩さんは言う。

「日傘を差すことで両手がふさがり安全上の問題があるのなら『上手に使おうね』と教え、通学路が狭くなっているのであれば『広がらないようにしよう』と指導することで解決します。日傘自体を禁止するのではなく、どうすれば安全に使えるかを子どもと一緒に考えるのが大人の役目です」

日傘推奨の自治体も

 そうした中、日傘を推奨している自治体もある。

 栃木県の県央南部に位置する壬生町。町では、気温が高くなる6月中旬から9月下旬の間、「傘差し登下校」として小学校に日傘の利用を推奨している。

 同町教育委員会によれば、取り組みが始まったのは新型コロナ禍の20年度。ソーシャルディスタンスの確保による感染防止と、熱中症対策を目的に導入された。

 当初は両手がふさがることでの安全性を懸念する声がごく一部にあったが、6年目の今ではすっかり浸透。町内に八つある小学校で7~8割の児童が日傘を差して登下校しているという。同町教育委員会学校教育課主幹兼指導主事の高橋唯拓(ただひろ)さんは、「傘の使用は個人の判断に委ねておりますが、『暑ければ傘を差す』という子どもたちは増えています」と話す。

 子どもの日傘と学校――。おかしなルールを見直す、そんな夏にしよう。

(AERA編集部・野村昌二)

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