栃木県壬生町で日傘を差して登校する児童たち。子どもの皮膚は薄く、紫外線の影響を受けやすい。日傘は暑さだけでなく、日焼け対策にもなる。(photo栃木県壬生町教育委員会提供)
栃木県壬生町で日傘を差して登校する児童たち。子どもの皮膚は薄く、紫外線の影響を受けやすい。日傘は暑さだけでなく、日焼け対策にもなる。(photo栃木県壬生町教育委員会提供)
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 じりじり照りつける太陽。いまや「災害級の暑さ」とまで言われる日本の夏。外を歩くには日傘が必須な状況で、男性も日傘を使い「日傘男子」という言葉もすっかり定着した。けれど、子どもの日傘はあまり見かけない。さらに、学校によっては禁止しているところもあるという。なぜなのか。

【写真】「傘差し登下校」として小学生に日傘の利用を推奨する自治体も

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「学校から日傘は禁止と言われています」

 そう話すのは、小学2年生の息子がいる東海地方に住む40代の女性。

 自宅は小学校から遠く、子どもの足だと30~40分かかる。子どもたちは登下校の際は帽子をかぶってはいるが、特に下校時は最も暑い午後3時ごろ。40分も炎天下を歩いて帰ってくるので、熱中症が心配だ。

 息子は、顔を真っ赤にして、グッタリと帰宅する日もあり、水風呂に浸かってクールダウンしているという。

 そこで、学校に「下校時だけでも日傘を使わせてほしい」と頼んだが、「両手がふさがると、特に低学年は転んだりして危険なので」とやんわり断られた。でも、と女性は言う。

「手がふさがって危ないというなら、雨傘だって同じはず。もし子どもが熱中症で倒れたら、誰が責任を取ってくれるのでしょう」

「日傘はNG、雨傘はOK」に疑問

 女性の疑問はもっともだ。

 日傘はNG、雨傘はOK--。こうしたルールは各地の学校で見受けられる。

 SNSには、「通学路が狭くなって、他の通行者が迷惑するので日傘はダメと言われた」「視界が遮られて危ないからNGと言われている」といった声が散見される。

 では、子どもたちは、日傘についてどう考えているのか。

 医療脱毛専門院の「リゼクリニック」は2024年5月、小学生(4~6年)・中学生・高校生の女性400人を対象に「夏の紫外線対策と美容調査」のネット調査を実施。その中で「日傘」について聞いたところ、小学生の7割、中学生は約6割、高校生は5割強が「日傘を使いたい」と回答した。

「使いたい(使う)理由」(複数回答)は、小学生は「日焼けしたくない」が79.2%とトップ。続いて「直射日光がまぶしい/肌を綺麗に保ちたい」が同率で58.3%、「暑い」が54.2%となった。実際、日なたで日傘を差した状態と差していない状態で比較すると、体感温度は4度近く低下するという。

 にもかかわらず、「雨傘はOKで日傘はNG」という、ダブルスタンダードといえるルールに、保護者たちの間で戸惑いが広がる。

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