
選手獲得に独自の視点
DeNAの元編成担当はこう分析する。
「DeNAは選手を獲得する視点で独自色が強いかもしれません。昨秋のドラフトでは、他球団が2、3位あたりで指名を考えていただろう竹田祐を、細分化されたデータを基に今後の育成次第で先発の柱として期待できると判断して1位で指名しました。藤浪は160キロを超える直球を投げられるという他の投手にはない魅力があります。制球難が大きな課題ですが、投球を細かく分析した上でフォームのメカニズムを修正すれば再生可能と考えたのでしょう」
これまでにも他球団で力を発揮できなかったが、DeNAに移籍して素質を開花させた投手がいる。サブマリン右腕の中川颯(今年から登録名・颯)はオリックスに在籍した3年間でわずか1試合登板に終わり、23年オフに戦力外通告を受けたが、潜在能力を高く評価していたDeNAに移籍すると、昨年は29試合登板で3勝0敗1セーブ5ホールドをマークし、CSや日本シリーズでも快投で大きく貢献した。今年も救援で19試合登板し、防御率1.65と安定した投球を続けている。楽天から22年のシーズン途中にトレード移籍した森原康平も、昨季はチーム最多の58試合に登板し、29セーブ11ホールドをマーク。26年ぶりの日本一で胴上げ投手となった。
DeNAを取材するライターは「藤浪はDeNAのチームカラーに合うと思います」と期待を寄せる。
「他球団の選手が溶け込みやすい環境ですし、藤浪は阪神時代から外国人選手を含め、チームメートと積極的にコミュニケーションを取っていたと聞いています。バウアーなど助言をくれる投手がいるので、技術面、メンタル面で得られることは多いと思います」
藤浪は高卒1年目の2013年にいきなり10勝をあげ、15年まで3年連続2ケタ勝利をあげた。15年には221奪三振でタイトルも受賞している。以前に対戦したセ・リーグ球団のOBはこう話す。
「高卒1年目に対戦した時は衝撃を受けました。当時は投手としての完成度で言えば、同学年の大谷翔平(ドジャース)より上でしたね。ただ、その後に投球フォームで試行錯誤して、2軍で対戦した時は球がバラつき、ストライクを取るのに目一杯でした。投げる球は一級品なので、あとはその球を投げる確率を高める再現性をいかに高められるか。彼の課題はそこに尽きます」
制球難は長年悩んできた課題だ。メジャーでも各球団で修正に取り組んだが、実を結ぶまでには至らなかった。藤浪は新たな地で、輝きを取り戻すことができるか。DeNA入団が実現し、古巣の阪神戦でマウンドに上がったとき、球場がどんな反応を見せるか興味深い。
(今川秀悟)
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