「師匠、正月の餅を食べたら、差し歯が抜けちゃった。仕方ないから、差し歯の代わりに餅を詰めています」
「言葉がスッと出てこなくて、アルミホイルのことを『鉄のサランラップ』って言うんです。この頃は、おかみさんも怪しくなって、スターバックスに行くことを、『オートバックスでコーヒー飲んでくる』って(笑)」
愉快な日常生活。いつまでも元気でいてください。
80代の芸人が4人も
ベテランといえば、86歳の遊三は元気いっぱいだ。声がよく出ているし、噺にメリハリがあり、ネタの数も多い。
「今年でこの道70年。昔々、私がとん馬と言ってた頃の修業仲間、柳家小ゑん(のちの立川談志)、三遊亭全生(五代目円楽)、古今亭朝太(志ん朝)なんてのは、みんな旅立ってしまった。おかげでこっちの仕事が増えたよ。次に行くのは木久扇、小遊三かな(笑)。小遊三は私の弟子なんだけど、こないだ年を聞いたら78歳だって。師弟で後期高齢者だよ。こうなったら、私も頑張って長生きして、小遊三の葬儀委員長を務めようと……」
正月早々、満面の笑顔で縁起の悪いことを言っている。
次の出番の茶楽も82歳だ。ネタは十八番の「紙入れ」。間男(不倫)を扱った落語の中ではポピュラーなネタだが、茶楽はなぜかこの噺が大好きなようで、おめでたい席でも、お堅い場所でも、浅い出番でも、トリの高座でも、場所を選ばず「紙入れ」を掛けてくれる。これがまた実にいやらし……、いやいや、色っぽいのである。以前、ご本人に、「口演の時間も伸ばしたり縮めたりできるんですか?」と聞いたら、待ってましたという顔で答えてくれた。
「『紙入れ』は、5分から25分まで、5分刻みで長短いろいろなバージョンを作ったから、いつでもどこでもできるんですよ」
どうしてそこまで、間男ばなしをやりたがるのか。