レアな噺家に遭遇できるかも
こんな状態では、じっくりと腰を据えて演芸を楽しもうなんて気分にはなれない。それなら正月興行は避けて、普段の寄席が始まるまで待とうじゃないかということになるのだ。
だがしかし、そこまでわかっていても、呆れたことに、演芸好きは正月の寄席に出かけてしまうのだ。

それは、正月番組が気に食わないからといって、寄席が普通の番組に戻るまで我慢していられないからである。そして、落語協会、落語芸術協会に所属している芸人の大半が出演するので、普段の寄席ではなかなか見ることのできない「レア」な噺家に遭遇できるということもある。さらには、何だかんだ文句を言っても、やっぱり「正月の寄席見物」という浮かれ気分を少しは味わいたいのである。
正月興行といっても、三が日を過ぎれば、あるいは正月休みが終われば、寄席の入場者はかなり減るのがわかっている。だから僕の新年の寄席通いも、今年も初席半ばを過ぎた頃から始まっている。
8日の第二部。客席は空いているとまでは言えないが、あれこれと席を選ばなければ、ゆっくり座って演芸を楽しめるぐらいの“余裕”があった。
午後2時半という、いつもと違う半端な時刻の開演だったせいか、ちょっと遅刻して前座の出番に間に合わなかった。
ほんわかと癒しの高座が特徴の可風は、まくらで彼の師匠・三笑亭可楽の近況報告をしてくれる。可楽は88歳の高齢で、ここのところ寄席の出演がない。でも、弟子の可風のおかげで、僕らは間接的に「可楽の定点観測」ができるのだ。