「僕は見せ方がうまいだけ。何がバズるとか、はやるという嗅覚はあったかも」(撮影・松永卓也/朝日新聞出版写真映像部)
「僕は見せ方がうまいだけ。何がバズるとか、はやるという嗅覚はあったかも」(撮影・松永卓也/朝日新聞出版写真映像部)

「これまでの積み重ねで上達している部分はあると思う。僕の頭の中に方程式があって、こうやったらこんな味になって、おいしいものができるでしょうねっていう。作る前に味は決まってるんです」

 たとえば2019年にX(当時はツイッター)で紹介した「じゃがアリゴ」。

 フランスののびるチーズマッシュポテト「アリゴ」という料理をスナック菓子「じゃがりこ」と「さけるチーズ」、塩、熱湯で再現した。

 混ぜるだけの簡単レシピで42万いいね、13万リポストを記録した。

「何かの拍子に一瞬で思いつきました。できんじゃね?と思い、やってみたら想像通りの味になったんですよね」

 リュウジさんの脳内に味覚のパズルピースが詰まっており、それらを組み合わせるとおいしくて簡単な新レシピが生まれる。

「ただ、料理には『好みの壁』があって、1000人いたら1000人がすべておいしいと思うものはなかなか作れません」

 塩分、甘さ、辛さ、歯ごたえなど好みは人それぞれ。日本人全員が好きそうなカレーだって、嫌いな人はいる。

 料理でバズるのは難しい。それを何度もバズらせるのだから、奇跡的な才能の持ち主である。

リュウジさんの最新刊『孤独の台所』(朝日新聞出版/1540円・税込み)
リュウジさんの最新刊『孤独の台所』(朝日新聞出版/1540円・税込み)

あの人こそ天才

 レシピにおいて天才肌のリュウジさんにも尊敬する料理研究家はいるのだろうか。

「イタリアンの落合さん」

 日本イタリア料理協会の名誉会長で「伝説のシェフ」と呼ばれる落合務さんだ。

「自伝も買って読みました。あの人こそ天才です。

 落合さんのレシピはわかりやすいから、素人が作っても味がブレない。

 イタリアンなのに、『オリーブオイルがなければ他の油でもいいです』なんておっしゃるところも好きです」

 筆者が若い頃に好きだった料理研究家の小林カツ代さんの名前を挙げると「小林カツ代さん! あの人も偉大すぎる」。

 リュウジさんがレシピでややてこずるのは「ジェネリック」シリーズだという。

 低価格の後発医薬品(ジェネリック医薬品)になぞらえて、安価な食材を使い、人気の外食メニューを再現していくレシピ。

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