西川口榎本クリニック副院長の斉藤章佳さん(撮影/國府田英之)
西川口榎本クリニック副院長の斉藤章佳さん(撮影/國府田英之)

「四谷大塚」元講師のケースとの類似性

 斉藤さんによると、子どもに性加害を繰り返す人は、主に13歳未満の児童に対する持続的な性行為に関する性的空想や性的衝動、または性的行動が反復される「小児性愛症」という精神疾患の診断名が使われることが多いが、「小さくて弱い立場の児童の方がコントロールしやすい」という支配欲が動機のケースもある。

 どちらにせよ、教員の採用時に見抜くのはほぼ不可能で、加害行為も周囲にばれないように狡猾に、巧妙に行う特性がある。

 冒頭の森山容疑者はその典型例だろう。教師と児童という絶対的な力関係がある環境で、「学校だより」の写真を撮影する立場にあり、さらにそのデータをどう使うかの権限を持っていた。

「性加害の対象がいて、加害行為ができる環境と状況が整ったときにトリガー(引き金)がひかれるのです。でき得る対応としては、死角を作らない、ドアは開放しておくなど『入りやすくて見えにくい場所』を作らないこと。教室に防犯カメラを付けるなど、性犯罪が起きにくい環境や仕組みをつくることは絶対に必要です」(斉藤さん)

 昨年、教え子の児童らを盗撮しカカオトークというSNSで共有していた大手学習塾「四谷大塚」の元講師に有罪判決が下ったが、斉藤さんは森山容疑者らの事件との類似性を指摘する。

 児童ポルノの愛好家には、秘匿性の高いグループを作り、いかに自分が「いい作品」を持っているかを自慢し承認欲求を満たすコミュニティに所属している人がいる。

「彼らの『作品』とは、一次元が小説で、二次元が漫画やアニメ、生成AIを含めた創作物。三次元が実在する児童の児童ポルノです。この世界にいると、児童への加害行為のハードルはどんどん下がります。今回の事件では児童への接触型の性犯罪はなかったようですが、発覚しなければエスカレートする危険はあったと考えています。また、最近は生成AIを駆使して二次元と三次元のどちらにも該当しないものを作り、法の網目をすり抜けようとする人も出てきています。テクノロジーの進化に法が追いついていないのが現状です」

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