また、同調査では住宅ローンに関する後悔を、「借り入れ形態(単独ローンかペアローンか)」に分けて分析したところ、借り入れ経験者で「後悔あり」と回答した割合は、ペアローンが41.6%と、単独ローンの36.2%より高い割合であることもわかった。

「リポートでは公開していませんが、アンケートではさらに詳しい設問を用意しており、『家族構成の変化に備え』『働き方の変化に備え』『住み替えに備え』といった3つの観点から、借り入れ形態の後悔の背景を細分化しています。その中でもっとも多かったのが、子どもが生まれたり離婚したりするなど、『家族構成の変化に備えて、ペアローンではなく単独ローンにしておけばよかった』という回答でした。つまり、ライフスタイルの変化が、後悔の要因になりやすいのだと考えています」(同)

絶対に安心はない

 現在、不動産価格の上昇により、都内で住宅を購入するには、共働きでないと現実的に難しい。それに、終身雇用が前提でなくなりつつあり、「年を取れば給料が上がり、最後に退職金で繰り上げ返済すればよい」といった従来のような考え方が、今の時代には合わなくなってきている。

 だからこそ、矢野さんは「余裕のないローン設計」には、それなりのリスクがあると考える。

「家計の状況は人それぞれ異なるため、『これをしておけば絶対に安心』というような方法は、住宅ローンに関しては存在しないと思っています。住宅ローンを借りる際には、『金融機関の審査に通るかどうか』や『どれだけ有利な条件で借りられるか』といった点に意識が向きがちです。ただ、『これ以上は借りられない』というギリギリの水準まで借りるのではなく、返済に余裕を持たせた借り方を意識することも非常に重要です」(同)

 住宅ローンは30年以上にわたるなど長期の借り入れであるにもかかわらず、どうしても「今」の情報だけで決める必要があるという難しさがある。「貧すれば鈍する」とはよく言ったもので、身の丈に合った住宅購入をしたほうが、将来後悔せずに、幸せに暮らしていけるはずだ。

(AERA編集部・古寺雄大)

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