
終身雇用から転職や独立をする人が増えてきた時代。しかし50歳からの転職は、築いてきたキャリアや収入の維持など一歩踏み出すにはパワーがいる。実際に異業種への転職をした女性に話を聞いた。AERA 2025年7月7日号より。
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看護師を58歳で辞め、ファッション業界に飛び込んだ石橋洋子さん(62)。身長153センチという小柄な体形を上手に生かした着こなしが人気で、ファッションブランドのディレクターやモデル、インスタグラマーとして活躍中だ。「好き」を転職につなげるまでの道のりや第二の人生を満喫するコツを聞いた。
──50代で転職に踏み切るのには相当な覚悟が必要だと思います。いつ頃から転職を意識し始めたのですか。
福岡県の病院で看護師をしていた50代前半の頃です。ふと「私の老後ってどうなるんだろう」という思いが頭をよぎりました。60歳で定年退職して、給料が減額されてもそのまま働き続けて……。人生このままでいいのかな。もっと自分にできることはないのかな。そんなふうに考えてずっと悩んでいました。
現実的な問題として給料がカットされると、今の生活が維持できませんよね。私は中学生の時にファッションに興味を持ち始め、それ以来ずっと洋服が好きです。だから、看護師としての給料は食費などを除いて全部洋服代に充てていました。このまま働き続けた結果、今までのように洋服が買えなくなるのはいやだという思いもありました。
──転職のためにどんな行動を起こしましたか。
悩みながらも、何か具体的に行動したわけではありません。ただ、職場の後輩が「そんなに洋服が好きならインスタグラム始めてみたら」とアドバイスをくれました。転職とは関係ないけど、自分のコーディネートを記録してみようという軽い気持ちで2015年9月から始めました。