写真・図版(3枚目)| 中年の危機に陥ったつるの剛士、40代に入り「自信がなくなった」 その先にあった意外なモノとは?

「寄り道」の学びに人生のヒントが

――5月に50歳になられました。大学で学んだことは、これからの人生にどのように役立つと思いますか。

 直接的に役立つ部分は、もちろんあると思います。これまで僕は、子育ての悩み相談を受けることが多かったのですが、これからは自分の経験に加えて、発達心理学や家族心理学の観点からもお話しできるかもしれません。

 でも、学んだメリットは、それだけではないと思うんですよね。「寄り道」の楽しさを知ったのが、自分にとっては大きな収穫でした。

――「寄り道」の楽しさとは。

 入り口こそ資格取得が目標でしたが、その過程で偶然にも心理学に出合い、好奇心に誘われるまま学んできました。2年前には、まさか自分が(カール・グスタフ・)ユングにハマって、本を読みあさることになるとは思っていませんでした(笑)。

 資格や就職のための勉強は、ゴールから逆算して最短ルートを行くようなイメージです。一方、自分の興味に導かれながら、寄り道をするように学ぶと、他人とかぶらない自分だけのルートを探検することができる。その道中で、自分の人生を開くヒントがパッと出てくることがあります。予想外のキャリアにつながることも。そういう“偶有性”を楽しめるのが、大人になってからの学び直しのいいところなんじゃないでしょうか。

――これまでの生活の延長線上では会うことがなかった人たちとの出会いも、刺激になりそうですね。

 はい。僕は、大学に行ってからLINEグループが2つ増えました。グループの最年長は70代のおばあちゃん。パソコンの使い方を覚えながら、一生懸命学んでいらっしゃるのを見たら「自分なんてまだまだだな」と痛感しました。

 よく知った世界に長くいると、自分が想像できることの中で生活できてしまい、その外にはなかなか行けないものです。大学は僕にとって、半ば強制的に自分の世界を開いてくれる場でした。人生経験を重ねてから学ぶのも、悪くないですね。

(聞き手・塚田智恵美)

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