18年に行政が主導する生産調整の目標配分は廃止された。生産調整廃止に向けた「第一歩」とされたが、その後、大きく進展することはなかった。農水省は国内の需給見通しを作成し続け、毎年、約3千億円の転作補助金も交付した。背景には、米価の維持を重視する農協やその支援を受けている自民党農林族の「復活」があった。

 奥原氏は「コメは食料の安定供給を考えるときに最も重要な穀物だ。だからこそ過保護にするのではなく、生産性を向上させて発展させることが重要」と語り、実質的な生産調整を段階的に廃止し、プロ農家へ農地を集約し、輸出拡大による生産拡大を進めていくべきだと主張する。

失態重ねる農水省と自民党

 令和のコメ騒動が起きてから農水省は失態を重ねた。

 まず、24年8月、コメ不足が深刻になっても、備蓄米の放出に動こうとしなかった。当初、想定していた有事や災害ではなかったが、自治体首長らから放出すべきだとの声が出ていた。

 当時の農水相の坂本哲志氏は「収穫が本格化する9月になれば落ち着く」と、放出を否定し続けた。価格の下落を嫌う農協や農家に配慮したのは明らかだった。

 事態は悪化するばかりで、江藤氏が農水相になり、今年1月になってようやく備蓄米の放出を決めた。

 直後に2度目の失敗があった。放出の手法を誤った。価格の下落を最小限に収めようと入札という手法をとった。最も高い金額を示した人が落札するため、逆に値を吊り上げる可能性もあった。さらに参加を小売や流通業者ではなく、集荷業者に絞った。結果的にJA全農が大半を落札して管理下に置いた。スーパーへの配送が遅れ、社会問題化した。

 身内を意識したのか、失言も目立った。今回のコメ騒動で、野村氏は小泉氏に対し、鹿児島県であった森山裕幹事長の国政報告会で「ほとんど自分で決めて自分で発表をしてしまう。(自民党の部会に諮るという)ルールを覚えて」と発言し、批判を浴びた。

 山野氏も5月の定例記者会見で現状のコメ価格について、「決して高いとは思っていない」との認識を示したことで波紋を呼んだ。2人とも、価格を下げることに消極的なように映った。何より、江藤氏は「私はコメを買ったことがない」と、国民の神経を逆なでした。国民の怒りは頂点に達し、引責辞任に追い込まれた。

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