勢いに乗った小牧南は、もう1点を返し、なおもエラーなどで1死満塁のチャンスに、4番・吉岡裕介がフルカウントから左越えに逆転満塁サヨナラホームラン。8対6の劇的勝利を収めた。この間、ネット裏のスコアラーが打順の間違いに気づいたが、あっという間に試合が終わったため、なす術がなかった。
もし、加納の次打者・小林光の投球前に昭和側がアピールしていれば、打順を飛ばされた舟橋がルール上アウトになり、加納の安打も取り消されていた。だが、小林に投球した時点でアピール権が消失し、そのまま試合が成立してしまった。
試合後、昭和・坂本仙弘監督は「1番バッターのときに気がついたが、アピールしようとは特に思わなかった」とポツリ漏らしたが、そんなときに限ってまさかの大逆転負けに泣く羽目になるのだから、“野球の神様”もなかなか意地悪だ。
スリーアウトチェンジになったのに、球審の勘違いで攻撃が続行されことから、5回コールドで試合終了後にやり直しの珍事となったのが、2002年の愛媛大会1回戦、済美平成対北宇和だ。
大会初日の第2試合、北宇和は犠打を絡めて得点を重ねる堅実な試合運びで4回までに4点をリードした。5回にも4安打を集中して8対0。なおも2死二、三塁で次打者が内野フライに倒れ、スリーアウトになった。
直後、北宇和ナインは守備につこうとベンチから出ようとしたが、なぜか球審は次打者に打席に入るよう指示するではないか。
「おかしいな」と思いながらも審判には逆らえず、そのまま攻撃続行。“3死二、三塁”で打席に入った次打者は左中間に2点タイムリー二塁打を放ち、10対0。5回コールドでゲームセットとなった。
ところが、勝った北宇和の校歌斉唱の最中に、遅まきながら審判団が誤りに気づき、タイムリー二塁打を取り消して、8対0の6回から試合再開というまさかの展開に……。今度は北宇和ナインがコールド負けを宣告されたようなショックを受け、捕手の芝俊二主将も「気持ちを切り替えるのに苦労した」と戸惑うばかりだった。