
小中高と大分の公立校で学び、米・ハーバード大学、ジュリアード音楽院を卒業・修了したバイオリニストの廣津留すみれさん(31)。その活動は国内外での演奏だけにとどまらず、大学の教壇に立ったり、情報番組のコメンテーターを務めたりと、幅広い。「才女」のひと言では片付けられない廣津留さんに、人間関係から教育やキャリアのことまで、さまざまな悩みや疑問を投げかけていくAERA DIGITAL連載。今回は、「優秀な同期と比べてしまい自己肯定感が上がらない」と悩む20代の学生からの相談に答えてくれた。
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Q. 失敗したり思い通りにいかなかったりしたときに、立ち直るのが苦手です。優秀な同期と自分とを比べてはいつも落ち込んでしまいます。他人と比べないことが大事なのは頭ではわかってはいるのですが、難しいです。世界のトップ層が集まるハーバード大学で学ばれた廣津留さんは、優秀な学生たちの中でどのように自己肯定感を保っていたのでしょうか。
A. 世界には優秀な人はいくらでもいます。ハーバードにももちろん宇宙工学や量子力学などあらゆる分野でそれぞれにものすごく詳しい学生がいましたが、正直そういう人と比べても仕方ないと思っていました。専門が違うので知識量に差があって当たり前だからです。大事なのは、「自分にも得意なことがある」と忘れないことではないでしょうか。優秀な同期と自分を比べてしまうとのことですが、冷静な目で見ると、どんなにすごい人でも得意・不得意はあるもの。私だってバイオリンは得意でも、料理は苦手です(笑)。
研究や仕事といった面だけではなくもっと広い視野で見てみると、優秀だと思っていた人よりも、自分のほうが得意だったり周りから頼りにされていたりすることがあるかもしれません。人柄や人徳といった部分でもいいと思います。たとえば、仕事のことはあまり聞かれなくても、個人的な悩み相談はよく持ちかけられるとしたら、それは人の話を親身になって聞く力があるからではないでしょうか。そうやって目線を変えて物事を見てみると、気持ちが楽になると思います。
また、いろんな異なるコミュニティーを持っておくこともおすすめ。あるコミュニティーでは聞き役でも、別のコミュニティーではみんなを引っ張っていく存在になるなど、それぞれの関係で立場や役割も変わってきますよね。自分の居場所や役割があるというだけでも自信になりますし、さまざまな関係性の中で自分のオリジナリティーを見つけてのばすことで自己肯定感につながってくると思います。
もちろん、自信がある得意分野で自分よりも優秀な人たちを目にすると落ち込んでしまう気持ちはわかります。でも、その気持ちを「なぜあの人は優秀なんだろう」と客観的に分析する方向に持って行き、自分ももっと頑張ってみよう、学んでみようというモチベーションとしてポジティブな気持ちに昇華させると、また別の景色が見えてくると思いますよ。