
ソフトバンクでは1軍に定着できなかったが、ウエスタンリーグで5年連続本塁打王に輝いている。共に自主トレを行った山川が長距離砲としての才能を絶賛し、王貞治球団会長、小久保裕紀監督の期待も大きかった。巨人サイドが打診してトレードが成立したが、リチャードは他球団からの評価も高かったという。
「考える力が欠けている」
長距離砲は希少価値がある。一本立ちするまで時間がかかると言われているが、リチャードが伸び悩んでいる原因はなんだろうか。ソフトバンクの元コーチはこう振り返る。
「ファームで5年連続本塁打を獲得したことがフォーカスされますが、打率が2割5分を超えたシーズンが一度もありません。1軍の投手に比べて球威、制球力でレベルが落ちる2軍の投手相手に打率2割8分以上打てないと厳しい。リチャードの場合はボール球になる変化球を空振りするケースが多く、直球にも強いとは言えない。打席を重ねて確実性や選球眼が上がるのを期待しましたが、思い描いた成長が見られなかった。25歳という年齢は決して若くない。覚醒してほしいですけど、今のままでは厳しいと思います」
元球界OBでソフトバンク時代に対戦した独立リーグの監督は、リチャードについてこう指摘する。
「もったいないなと感じましたよ。ソフトバンクはファームでもきっちり配球を読んで打つ打者が多い。追い込まれても進塁打を打つための工夫が見られたりするけど、リチャードはボール球を追いかけるスイングが目立ち、2ストライクからド真ん中の直球を平然と見逃し三振するなど打席での狙いが分からなかった。岡本、山川、村上宗隆(ヤクルト)と本塁打王を獲得する選手たちに共通するのは、配球を読む力です。ボール球を見極めて打者有利のカウントに持ち込んで、狙い球をきっちりスタンドに運ぶ。リチャードに欠けているのは打撃技術だけでなく、考える力だと思います。1軍の打席で失投はなかなかきません。パワーだけでは通用しない世界で、相手バッテリーの心理を読む力が重要だと思います」
巨人は将来を嘱望された秋広を出血覚悟で放出して獲得しただけに、リチャードにかける期待は大きい。レギュラー争いが熾烈になっている野手陣の中で、求められるのは結果だ。交流戦でリチャードの打棒は爆発するだろうか。
(今川秀悟)
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