
カルローズ米は国産米の高騰を助長?
国内最大規模のスーパーマーケットであるイオンで販売されれば、当然、多くの人に認知される。少しでも安いコメを求めて、国産米からカルローズ米に切り替える消費者も少なくないだろう。その結果、ほかの小売りもビジネスチャンスと捉えて、カルローズ米の輸入を始める可能性がある。コメ高騰から人々の生活を守るための措置は待ったなしだが、“その場しのぎ”で輸入米に飛びつけば、日本のコメ農家が打撃を受けかねない。
「コメ価格高騰の根本的原因は、生産者の減少によるコメ不足です。カルローズ米のニーズが広がることは、長い目で見れば、国産米の生産にブレーキをかけて価格高騰を助長することになる」(鈴木特任教授)
コメ不足の責任は、減反政策をはじめ生産量を抑制してきた日本の農政だけでなく、安いコメを求め続けた小売業者や消費者にもある。コメの値段は過去30年にわたり下落基調であり、“作ってももうからない”状況が農家の疲弊を招いたのだ。
鈴木特任教授は以前、ある仲卸業者が、こうボヤいていたのを聞いた。
「我々はイオンが買ってくれる値段から逆算して、仕入れている。農家さんに払える金額は、価格形成力を握っているイオン次第と言っても過言ではない」
ここでは小売りの代表例としてイオンの名前が挙がったようだが、“安さ”が歓迎される消費者心理に応えようと、小売りがコメの買い取り価格を引き下げ、農家に負担を強いてきた構図があるようだ。
取引先からの指摘を、同社はどう受け止めるのか。広報担当者はAERAの取材にこう応じた。
「当社がリーズナブルな価格で商品をご提供できるのは、規模のメリットを利用して物流を効率化するなど、日々知恵を絞っているからです。農家さんを買い叩き、その犠牲の上に成り立っている価格だという認識はまったくありません」