
小泉氏の「バック」にいる大物政治家
その後も、2021年の自民党総裁選では「小石河(こいしかわ)連合」として石破首相と小泉氏は連携したが、昨年9月の総裁選では2人とも立候補して争うことになった。ただライバルとなった小泉氏に対しても、石破首相は総裁選中のスポーツ紙のインタビューで「私は彼に対して嫌な思いを持ったことは一度もない」と話すなど印象を語っていた。
しかし、今回は政権の浮沈がかかっている正念場。石破首相もシビアな判断をしている、と前出の閣僚経験者は語る。
「今の石破さんは“ヘビの生殺し”のような状態です。野党がまとまって内閣不信任案を提出すれば、可決する可能性もあるが、野党としてはこのまま不人気の石破さんで参院選を戦ったほうが有利と考えている節もある。内閣不信任案が可決されれば、石破首相は内閣総辞職か衆院解散を選ぶことになるが、こんなに支持率が低いまま、衆参ダブル選挙に突入すれば、自民党が野党に転落する可能性だって十分に考えられます。こうした状況の中で、石破さんとしては起死回生策として小泉さんを起用して、米価が下がり支持率が回復すればそれでよし。たとえ小泉さんが失敗しても、ブーメランが刺さる先は小泉さんだけで、石破首相は次の総理を狙う有力候補の芽を摘めるわけです。つまり、どちらに転んでも石破首相はさしたるダメージを受けないという計算もあるはずです」
一方、小泉氏にも政界大物の“後ろ盾”がある。
小泉氏は5月27日、備蓄米を随意契約で販売する施策は、菅義偉元首相が新型コロナウイルスワクチン接種を推し進めた手法を参考にしたと記者会見で明かし、「菅総理が立てた目標はもっと高かった。本当にそんなことできるのかと言われていた」などと語った。前出の閣僚経験者はこう話す。
「小泉さんのバックには菅さんがついています。菅さんの父親の実家は稲作が盛んな地域だったが、父親は米作りよりも実入りが良いイチゴの栽培を始めて大成功した。しかし、それが気に入らないと農協から徹底的にいじめられた。だから菅さんはずっと反農協で、農政改革をしようする小泉さんを後ろからサポートしているんです。今回の米騒動にはいろんな人の複雑な思いが絡んでいる」
米の値段をめぐっては、その先の選挙に向けた自民党の思惑がうごめいている。
(AERA編集部・上田耕司)
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