石破首相の国会答弁を聞く小泉進次郎氏
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 連日のようにメディアをにぎわせている「コメ担当大臣」こと小泉進次郎農林水産相。備蓄米を随意契約で売り渡す施策により、先週から「5キロ2000円」のコメが店頭に並びはじめた。米価引き下げに邁進する小泉氏だが、かつて農政改革を試みて頓挫した過去もあり、いまだ予断は許さない状況だ。石破政権にとっては「もろ刃の剣」となる可能性もある。だが、「小泉氏が失敗したとしても石破首相に痛手はない」と見る向きもある。その理由は何か。関係者に取材した。

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 今回、随意契約を通じて放出する政府備蓄米の総量は約30万トン。その内訳は2022年産米20万トンと21年産米10万トン。29日、備蓄米の試食会に出席した小泉氏は21〜24年産の米を食べ「どれもおいしい」と述べたが、農水行政に詳しい元閣僚はこう話す。

「21年産は古古古米となり、正直、平時に食べることは想定していない“非常食”ですよ。決して味がいいなんて言えません。本来、備蓄米というのは地震などが発生した際の有事に備えてあるわけで、本当は需給調整に使ってはいけないんです。今、国民には米がなくなることへの恐怖感があるので、備蓄米30万トンに殺到する恐れもある。そうしたら、いったい何日間持つのか。5キロ2000円の備蓄米まで全てなくなったら、コメの値段は逆に高くなりますよ。小泉さんが今やっていることは火事が起きたから消火器で鎮火しようとしているようなもの。途中で消火剤が尽きたら、逆に燃え上がるんです」

 少数与党でかつ支持率が低迷している石破政権にとって、小泉氏の抜擢が失敗に終われば、夏の参院選にも影響を与えかねない。「国民は小泉さんへの期待感が強いぶん、失敗すればとんでもないブーメランになる」(政治ジャーナリスト)という可能性もあるが、石破首相は昔から小泉氏を高く買っていたことも事実だ。

 石破首相は2018年12月、筆者に小泉氏とのエピソードをこう語っていた。

自民党が野党に転落していた谷垣禎一総裁の頃、私の地元で鳥取市長選挙があってね。非常に厳しい選挙で、小泉さんが応援に入ってくれて、いくつか街頭演説して回ってくれたんですよ。その東京への帰り道、列車の中で小泉さんから『税金については何の本を読んだらいいんですか』と聞かれた。それで、ちょうどその時に持っていた税金の解説書を見せながら『参考になるよ』と伝えた。彼は本当に勉強熱心でね。その時にもいいなと思った」

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