一方の中国にはまだ切り札がある。一つは、レアアースで、このうち特に重要なものの輸出に規制をかけた。禁輸ではないが承認制なので、対米輸出は事実上止まっているようだ。これにより、米国では数ヶ月で在庫が底をつき、武器の生産ができなくなるという。深刻な事態だ。

「最後の最後」の切り札

 さらには、「最後の最後」の切り札として、中国が持つアメリカ国債の大量売却という手もある。米国債が暴落し、本物の金融危機になる。いまのところ、その気配は見せていないが、ベッセント財務長官はこれを一番恐れているはずだ。 

 このように見てくると、米国は決して有利とは言えない。

 どうせ負けるなら、早くそれに気づいて、他の戦いに切り替えるべきだ。

 一番望ましい展開は、ある日突然、「中国への追加関税はやめた。習近平は友だから彼を苦しませたくない」と平然と話すトランプ大統領の姿を目にすることだ。

 冗談のようだが、そうならなければ出口はなく、世界中の弱者が地獄を見ることになるかもしれない。

「粟と歩兵銃」を知らずに負け戦を始めたトランプ大統領。

 彼が豹変する日が来ることを願ってやまない。

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