思うに皐月賞前の公式会見で北村友一騎手は「負けたくない」と発言。その熱い思いが不利を受けた直後の急加速につながったような気がする。あそこでひと呼吸入れていれば……。実際に北村騎手も「外から動いてこられた際、リズムを乱し、もったいない競馬だった」と振り返っている。

 しかし、負けて覚えるのも競馬だ。今回は「馬を信じ、自分を信じ、クロワデュノールの力を最大限に発揮させるだけ」とスッキリとした表情で話し、気持ちの整理ができていた。となれば、やはり総合力で上回るクロワデュノールが最上位。7枠13番もフサイチコンコルドを思い出し、個人的にいい枠だと感じる。

 ミュージアムマイルは皐月賞の強さから2000mがベストの印象。どうしても2冠を逃したディーマジェスティやアルアインなどとだぶる。対して3着マスカレードボールは明らかにサウスポーであり、父ドゥラメンテ×母父ディープインパクトのダービー馬配合。しなやかなフットワークは東京で威力を発揮する。

 杉山晴紀厩舎のジョバンニ、サトノシャイニングは連下とした。前者は上積みという点、後者は折り合い面からくる距離適性で割り引いた。大外枠も試練に映る。もちろん、競馬の神様の配剤で武豊騎手が同一騎手3代ダービー制覇を達成したら素直に喜ぶつもりだ。

 一方、別路線で怖いのは毎日杯を驚異的な末脚で制したファンダム。王道組をまとめて面倒をみる可能性まである。京都新聞杯を勝ったショウヘイは思った以上の上昇度があり、ダービー3勝の厩舎力も怖いが、本家ほどのモンスターではない印象。それならプリンシパルステークスを勝ち、その後も追い切りで好時計を連発しているレディネスを穴で狙ってみたい。つまり波乱を呼ぶとしたら赤帽というわけだ。

 さあ、どうなる日本ダービー。胸が高鳴ってきた。

(文・山本智行)

山本智行/1964年岡山生まれ。スポーツ紙記者として競馬、プロ野球阪神ソフトバンク、ゴルフ、ボクシングなどを担当。各界に幅広い人脈を持つ。趣味は旅打ち、映画鑑賞、観劇。高校時代は元巨人・川相と投げ合い、B'zの稲葉浩志とは中高の同級生。好きな馬はオグリキャップ、キングヘイロー、ナリタトップロード。

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