フジ・メディアHDのアクティビスト対策は?
では、フジ・メディアHDはどのような対策を練っているのでしょうか。そのヒントが2025年5月22日に配信された日経ビジネスの記事「フジ『2度目の裏切り』にSBI北尾氏の諦念『勝手にしたらいい』」の中にありました。
「たとえば今回の会社提案では、元ファミリーマート社長の澤田貴司氏が候補入りしたことが注目を集めたが、北尾氏はその人選の背景に『伊藤忠(商事)がいる』と指摘。比較的温厚な人物としてフジと伊藤忠商事とが澤田氏に白羽の矢を立てたと見る」との記述あり、私もこの北尾氏の読みはあながち的外れではないのではないかと見ています。
フジ・メディアHD側が株式を持たない、持ち合いではない形での安定株主が必要であり、それを伊藤忠商事にしてもらおうとしているのではないでしょうか。フジ・メディアHDと伊藤忠商事は合弁会社を作ってスカパーJSATホールディングスに出資するなど提携関係があり、例えば、アクティビストらが保有する株式を伊藤忠商事に買い取ってもらうという方法が考えられます。かつて西松建設がアクティビストのターゲットになった際に、伊藤忠商事は現にアクティビストが保有していた西松建設の株式を買い取ったことがあるからです。
フジ・メディアHDにはさまざまなアクティビストが登場しており、いろいろな思惑があるのでしょうが、彼らの目的だけは完全に一致しています。それはフジ・メディアHDへの投資で「儲けること」です。
株主提案をして取締役を送りこんで、フジ・メディアHDのガバナンスを改善したいわけではありません。彼らはフジ・メディアHDを「いい会社」にしたくて経営改善策を訴えている訳ではないのです。ただただ株価の上昇を期待し、株価が上がれば彼らの言う経営改善策が実行されていなくても売り抜けていく可能性があることには注意が必要です。
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