フジテレビ本社ビル(撮影:朝日新聞社)
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 2025年6月25日に開かれるフジ・メディア・ホールディングス(HD)の株主総会を前に、アクティビスト(物言う株主)が動きを活発化させている。

 特に、フジ・メディアHDの大株主である投資ファンド「ダルトン・インベストメンツ」の動向は、最高投資責任者ジェイミー・ローゼンワルド氏への独占インタビューがTBSの「サンデー・ジャポン」(5月25日)で取り上げられるなど、注目を集めている。

 2025年5月16日にはフジ・メディアHDの取締役会がダルトンの提案への反対を全会一致で決定しているが、ダルトンをはじめとしたアクティビストの真の狙いはどこにあるのだろうか。上場企業のアクティビスト対策の専門家で、初めての著書『株式投資の基本はアクティビストに学べ プロの投資に便乗する「コバンザメ投資」の始め方・儲け方』を上梓したばかりの鈴木賢一郎さんに解説してもらった。

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アクティビストが「サンデー・ジャポン」に出る理由

 ダルトンが「サンデー・ジャポン(サンジャポ)」に出たのは、「個人株主対策」と見るのが一般的でしょう。フジ・メディアHDの株主総会を前に、個人株主の票をなんとか自らの主張に引き込みたいから、サンジャポという一般の個人株主が見ているかもしれない番組に登場したのだろう、と。

 たしかに、2024年3月末時点のフジ・メディアHDの株主構成を見ると、「個人その他」が33.8%となっていて、表面上は個人株主がたくさんいるように見えます。しかし、この数字にはからくりがあります。説明が煩雑になりますから詳細は省きますが、私が算出した2024年3月末時点のフジ・メディアHDの個人株主の議決権割合は12.8%しかありません。

 おそらく、ダルトンもこのあたりのことはわかっていると思いますし、一連の騒動が影響したのか、2025年3月末の個人株主の数はかなり増えたものの議決権割合はほとんど変わっておらず、個人株主の票は今回の株主総会でそこまで重要ではありません。フジ・メディアHDには強固な安定株主がいるからです。安定株主とは、おおよそ「長期間にわたって株式を持ち続け、経営陣を支持してくれる株主」といった意味です。一般的には、取引先企業や金融機関などが該当します。

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