フジ・メディアHDはアクティビストの圧力に屈するか?

 実際には、40%程度という安定株主の割合は取締役会の提案が可決されるのに十分な数字ですし、フジ・メディアHDの経営改革を一定程度評価して支持する国内機関投資家もいるでしょう。ですから、アクティビストからはすでに、フジ・メディアHDの状況が株主提案を通しにくいものになっていると見えているのではないかというのが、私の予測です。

 そもそも、本気でこれから買い増しをしようとする人が周囲に「オレは買うぞ!」と言ったりするでしょうか。アクティビストが実践する株式投資の基本原則は「安く買って高く売る」であり、そのような報道が株価に影響したら、安く買えなくなるおそれがありますから、本当であれば黙って買うはずです。

 先に挙げたダルトンの目立った動きも含め、様々な手段を用いてアクティビストが情報発信をする真の狙いは、「オレに買われたくないならさっさと動け!(助けてくれる企業を早く見つけろ!)」と、フジ・メディアHDの経営陣に対して圧力をかけたいだけなのではないかと、私は見ています。もちろん多少追加取得をすることはあるかもしれませんが、それは圧力を高めるためではないでしょうか。

 そのような圧力にフジ・メディアHDの経営陣はどのように対応するでしょうか。フジ・メディアHDは2025年5月16日に公表した「改革アクションプラン」で、「政策保有株式、3年以内に1,000億円強を売却へ」と言っています。しかし、本当にこれを実施したら、安定株主の割合が低下してしまい、アクティビストに対抗できなくなってしまいます。

 フジ・メディアHDは、2025年6月25日に開かれる株主総会やアクティビストからの喫緊の攻撃を乗り切るためには、いろんな投資家からも指摘されている政策保有株式の削減に今回触れざるを得ませんでした。しかし本音では「安定株主がいないとマズイ」というのはわかっているはずであり、どうにかして確保しなければいけないという思いがあるはずです。そうしないと、虎の子の不動産にアクティビストが手を付けようとするからです。

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