譲渡車両の改造工事を担当した小田急エンジニアリングの岩崎佳之社長(左)と西武鉄道・鉄道本部の小川克弘車両部長=米倉昭仁撮影

小田急「名車両」をしっかり残す

 西武鉄道は、他社から譲受したVVVFインバータ制御車両を「サステナ車両」と呼んでいる。24日の引き継ぎ式で、西武鉄道の小川克弘車両部長は、こう語った。

「新造車両の導入と並行して、サステナ車両も導入することで省エネルギーの取り組みを加速させ、持続可能な社会に貢献したい」

 改造されたのは、主に車両の安全運行に関わる部分だ。自動列車停止装置(ATS)や無線機、停電時に車両機器を動かす蓄電池などが取り換えられた。それ以外の多くの部分は小田急時代のままだという。

「使えるものはしっかり残す、サステナブルな改造を意識しました」(小川車両部長)

 改造工事を担当した小田急エンジニアリングの岩崎佳之社長は、「この車両は長い間、小田急線の安全と快適をけん引してきた名車両です。これからは西武沿線のお客様のご期待にしっかりと応えてもらえると確信しております」と述べた。

 導入されたサステナ車両は西武国分寺線を走る。国分寺駅と東村山駅を結ぶ路線距離7.8キロの支線だ。支線では本線を走る電車ほど酷使されないので、譲渡車両であっても「短期間で老朽化して廃車を迎える事態は想定していません」(西武鉄道)。

小田急電鉄の8000形が西武鉄道に譲渡され、8000系に生まれ変わった=西武鉄道提供

大手私鉄への譲渡はまれ

 西武鉄道がサステナ車両の導入の検討を始めたのは3年ほど前。車両譲渡の話を持ちかけると、小田急電鉄には「えっ?」と、驚かれたという。

「大手鉄道事業者間での車両の譲渡が珍しいことから、驚きの反応をされたと推察します」(西武鉄道)

 小林さんによると、長年活躍してきた車両が中小の私鉄へ譲渡されるのはよくある話だという。「でも、資金力に余裕のある首都圏の大手私鉄に移籍されるのはまれです」

 国土交通省の資料によると、普通鉄道車両の1両あたりの価格は2億円前後。西武鉄道と小田急電鉄は中古車両の譲渡価格を公表していないが、車両新造に比べてコストの低減が期待できるという。

 サステナ車両の導入は、環境面でも収益面でも効果的な設備投資といえる。西武鉄道は小田急電鉄の8000形と東急電鉄の9000系を合わせて、29年度までに約100両を有償で譲り受け、サステナ車両として走らせる計画だという。

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