
サステナ車両は広まるか
首都圏の大手私鉄9社ではさまざまな種類の車両が走っている。そのなかから、なぜ西武鉄道は小田急電鉄の8000形と東急電鉄の9000系に目をつけたのか。
「車両の大きさやドアの位置などが駅の施設と合致したこと、同一車種で一定数の車両が確保できること、当社のサステナ車両導入計画と譲渡元の車両計画のタイミングが合ったこともあります」(西武鉄道)
中古車両の取引は、ある意味「巡り合わせ」であり、今回、西武鉄道への車両譲渡がうまくいったからといって、この動きが他の大手私鉄に広まることはないと、小林さんは見る。
「欲しいときに、条件に合う車両をなかなか見つけられないことは珍しくありません。バラバラな車両が走っている私鉄もあります」(小林さん)
元東京メトロに「くまモン」
大手私鉄は車両のデザインや色などを揃えて統一感を持たせているが、逆に統一感のない車両を売りにしている中小私鉄もある。
「たとえば、富士急行(山梨県)は小田急電鉄やJR東海で活躍した特急電車を購入して、外観の塗装や車内の内装をそれぞれ全く異なる方向性に変えて、観光列車のような雰囲気で走らせています」(同)
熊本電鉄(熊本県)には、東京メトロの日比谷線や銀座線で使用された車両が譲渡され、くまモンのラッピングの電車として走っている。今では地元の人に親しまれ、観光客を呼び寄せるようにもなった。
鉄道ファンに人気の「懐かしの車両」を走らせている鉄道会社もある。小湊鉄道(千葉県)や北条鉄道(兵庫県)は国鉄時代に製造された「キハ40形」ディーゼルカーを運行する。銚子電鉄(千葉県)の22000形電車には、譲渡元の南海電鉄2200系の塗装を採用している車両もある。
意外な場所で「第二の人生」を歩む車両を目にすると、懐かしさとともに、「まだ現役で頑張っている」と、共感を覚える人も多いのではないだろうか。
(AERA編集部・米倉昭仁)

