同じ農政改革派の小泉氏を農水相に起用した石破首相

ネット通販で安売りさせる秘策

 石破首相も一気に政策転換できたわけではない。江藤氏がとんでもない失言をしても一度は「続投」を表明していた。これについて自民党の閣僚経験者のA氏はこう話す。

「石破首相は党内基盤がぜい弱で、江藤氏を更迭したら、党内から『石破おろし』の勢力が台頭することを嫌った。ただ、世論の反発が思っていた以上で、主食のコメの問題でもあり、これ以上、引っ張るとそれこそ政権が危うくなると判断した。石破首相は農林水産大臣の経験があり、農政には明るい。小泉氏というカードも最初から頭にあり、一気に江藤氏の更迭と小泉氏起用を進めた」

 石破氏も小泉氏も農政に携わった経験があるが、農水族とは一線を画す立ち位置。農政改革が必要という考えで一致する。2人が持っていた秘策が、備蓄米をネット通販業者に随意契約で安く販売させるというものだった。小泉氏は、就任早々、大手ネット通販「楽天」グループの三木谷浩史会長と会談している。

「いきなり三木谷氏と会えば『備蓄米を安くネット通販で放出しますよ』と言っているようなものです。早いタイミングで、ネット通販業者に備蓄米を随意契約で安く売り渡す。そして、数量は少なくても、小泉氏が明言する『5キロ2000円』で販売の既成事実を作る。そうして、スーパーなども値段を下げさせるという作戦です」(農林水産省幹部)

 農水省は5月27日、備蓄米の随意契約に、ネット通販の「楽天」や大手スーパーの「オーケー」、ディスカウントストアの「ドン・キホーテ」など19社から申し込みがあったと発表した。随意契約で備蓄米の放出を進めることによって、6月初旬にもネットや店頭に安いコメが出回りそうだ。

「5キロ2000円を切る1980円くらいの値段になりそう」(農林水産省幹部)

 この流れを受けて出てきたのが、次のような声だ。

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