使用できる用具についても、高校野球では色やメーカーのロゴのサイズなどが事細かく決められているが、これは他のカテゴリーにはないものである。華美な装飾は高校生には似つかわしくなく、またメーカーの広告となることが商業利用に繋がるという考えから来ているものだが、これも多様性が認められる現代社会の流れとは逆行しているものと言える。
ちなみに2023年には、大谷翔平(当時エンゼルス)の使用しているスパイクがデザイン的な問題で高校野球で使用がNGとされたことも話題となった。何でもプロの真似をすれば良いというものではないが、トッププレイヤーの使用している用具を使いたいというのは自然な衝動であり、それに対して過剰に蓋をしているように感じる。そういったところからもジュニア世代の野球離れに繋がる部分もあるのではいだろうか。
また近年盛んに行われている暑さ対策にも気になるところがある。選手を守ろうという動きがある一方で観客に対しては配慮があまり見られないのだ。
夏の甲子園大会はグラウンドも暑いが、スタンドももちろんかなりの暑さになる。裏の通路には簡易的なクーラーが設置されているがもちろん十分な涼しさではなく、試合が進むと通路や階段で意識が朦朧としているような観客を見かけることも少なくない。一度外に出て近くの商業施設で涼みたくても、甲子園大会は再入場を認めていないため、ファンはそうすることができないのだ。1枚のチケットで複数の観客を入れたくないということもあるかもしれないが、現代のやり方であればいくらでも本人確認はできるはずだ。
高校生の部活なのだからそこまでファンのことを考える必要はないという意見もありそうだが、普段から暑い中で練習しており、ベンチ裏は涼しい選手よりも、むしろ熱中症などの危険性が高いのは観客の方である。また入場料は年々値上げしており、甲子園の中央特別指定席の値段は4800円と一般的な興行と比べても決して安いものではない。高校球児が甲子園に憧れるのは観客の多さという部分も大きいはずで、多くのファンを維持していくというのも伝統を守るという意味では重要だろう。