
移籍でキャリアを延ばした大田泰示
環境を変えることで、覚醒するケースは決して珍しくない。秋広と同様に巨人で背番号「55」をつけて伸び悩んだ大田泰示はその一人だ。東海大相模で通算65本塁打を放ち、超高校級スラッガーとしてドラフト1位で巨人に入団したが、なかなか1軍に定着できない。野球人生の転機は日本ハムへのトレードだった。移籍初年の2017年からレギュラーをつかんで初の規定打席に到達。19年には打率.289、20本塁打、77打点をマークし、20年には外野で自身初のゴールデン・グラブを受賞した。22年からDeNAに移籍して昨年限りで現役引退。16年間プレーしたが、巨人で野球人生を続けていたら、もっと短命のキャリアに終わっていただろう。他球団の打撃コーチは大田の変化について語っていた。
「巨人時代は結果を出さなければいけないという意識が強すぎるあまり、スイングが小さくなっていた。外角に逃げるボール球の変化球に手を出していたので、打ち取りやすい打者でした。日本ハムに移籍した後は強いスイングを取り戻してボール球に手を出さなくなった。ボール球と判断したら見逃し三振でOKという球団の方針だったんでしょう。結果を恐れなくなったことで迷いがなくなり、怖い打者になりました」
今回の秋広のトレードは、巨人の主砲・岡本和真が故障で離脱したため、三塁を守る長距離砲のリチャード獲得を巨人サイドが熱望したためだと報じられている。岡本の故障がなければ成立しなかったトレードだったと考えると、秋広の運命が興味深い。秋広が大田のように新天地で覚醒すれば、ソフトバンクだけでなく、育ててくれた巨人への恩返しになる。秋広のソフトバンクでの背番号は52。長距離砲の期待がこめられた背番号「55」の呪縛から解放され、秋広はどのような成長曲線を描くだろうか。
(今川秀悟)
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