
「セクハラを含む差別禁止は、国際的には当然の法的基準です。日本も、被害者が真に救済される制度をつくることが求められます」
キャリアを絶たれた
性暴力被害当事者らでつくる一般社団法人「Spring(スプリング)」共同代表の早乙女祥子(しょうこ)さんは、「企業や組織のトップの意識改革が不可欠」と指摘する。
自身も、職場での性被害の経験者だ。
15年ほど前、デザイン系の大学を卒業すると、ファッションショーを手掛けるイベントディレクターになりたいという夢を抱き、イベント運営会社に入社した。しかし、毎日のようにセクハラを受けた。
男性上司や女性の先輩社員から「ブーちゃん」と体形をからかわれた。スーツ着用の会社だったので、社長からは「パンツスーツも俺は好きだけどな」と性的な言葉をかけられた。
周りの先輩や同僚は誰も、いつものことといった様子で助けてくれない中、次第に精神的に追い込まれ、希死念慮を抱くようになり電車に飛び込むことも考えるようになった。入社して半年ほど経った頃、会社のトイレで過呼吸を起こし倒れ、病院に緊急搬送された。パワハラも重なったことで症状が悪化し、自律神経失調症と診断され、それから少し休職した後、仕事を辞めざるを得なくなった。
転職しても同様の被害に遭うのではないかと思うと、会社員になることが怖くてできなかった。今はフリーランスでウェブデザイナーなどをしているが、夢見ていたイベント業界でのキャリアを絶たれた。
「会社にセクハラの相談窓口もなく、加害者たちは自分たちの言動がセクハラだという自覚がなかったと思います」
(編集部・野村昌二)
※AERA 2025年5月26日号より抜粋
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