梅宮アンナさん

「差別や区別」をなくすことができたら

 がんになって、視界が変わった。これまでは、「なんとなくふわふわと生きてきた気がする」が、今は「時間を無駄にしたくない」と自然に思う。女子会で恋愛の話になったとき、友人が口にした「急がなくていいよね」の言葉に、同調できなかった。

「昔は明日が来るのは当たり前と思っていましたけど、そんなに残されている時間があるのかなって考えちゃいますよね」

 SNSでありのままを伝えることで、患者への「差別や区別」を少しでもなくすことができたら。気持ちがうつむきがちな患者たちに少しでも変化を起こせたら。

 それがアンナさんの願いだ。

 仕事人としても、この先を見つめる。

「見た目を整えなきゃ」は消えた

 右胸の切除手術前は、見た目が変わることが不安で、「パッドを入れなきゃ」と気にしていた。だが、切除を公表した今は、痛みがまだあるため、下着の肩ひもだけ外している。「見た目をなんとか整えなきゃ」という思いは頭から消えた。

 ただ、外出時や仕事に向かうときは、下着をつけないと気が引き締まらない。リラックスできる自由な自宅とは、そこは違う。

にもかかわらず、乳がんの患者が使いやすい下着は少なく、ウィッグも長時間つけていると暑くなるから帽子をかぶりたいときもあるが、おしゃれな帽子が少ないことも実感した。

「隠そうという心理ではなく、もっと自由におしゃれを楽しめて、行ける場所が増えたほうがいい。自ら感じた『不満』を、時間がかかっても形にしていきたい」

 乳がんを公表して半年。そうした思いを「伝えること」「伝えていくこと」が、「自分ががんになった意味だろう」と話す。患者としての「いま」を見つめ、素直な思いを言葉にする。

生涯付き合う人は誰か

 がんになって、気づきもあった。

「私一人で生きていく」

 本気でそう考えていたが、友人たちが病院に付き添って、病気の自分を支えてくれた。自分が生涯付き合う人は誰なのかを知ることができた。

 若いころから風呂があまり好きではなく、シャワーだけで済ませていたアンナさん。がんになって以降は、ゆっくり風呂につかり、術後の影響が残る体をほぐす。「湯船ってこんなに気持ちいいものか」という、50歳を過ぎてからの新たな発見。幸せなひとときだという。

「人間、幸せなときって、幸せを感じないんですよ。たぶん、それが当たり前で……。私は今、過ごす時間の一つ一つに、幸せを感じています」

 自分自身が生きる、今この時間にも、意味を感じている。

(構成・ライター 國府田英之)

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