ベンチに戻る坂本(日刊スポーツ)

「動体視力が衰えたのでは」

「今まで絶対に痛打を浴びていた甘い球を空振りし、ミスショットすることが急激に増えました。本人も打席で首をかしげていたので捉えた感覚があったと思います。内角をさばく天才的な打撃技術が持ち味ですが、うまくミートできなくなっていました。速い球にアジャストできなくなり、変化球も腰砕けのスイングでタイミングが合わない打席が目立ちます。個人的に感じたのは動体視力の衰えかなと。坂本が打席で構える前に何度もまばたきをする姿を見ましたが、以前と見え方が変わって反応できなくなっているんじゃないでしょうか」

 30代後半を過ぎて動体視力の衰えで成績が急下降するのは、決して珍しいことではない。在京球団でプレーした選手は「動体視力が衰えると速い球への対応が厳しくなります。バットとボールの距離感が取れなくなり選球眼も悪くなるので、ボール球に手を振ることが多くなり打率が下がってしまう」と話す。

「始動のタイミングが遅くなった」

 一方で別の見方もある。セ・リーグの他球団のコーチは「すべての打席を見たわけではないので細かい部分は分からない」と前置きした上で、「始動のタイミングが遅くなったように感じる。テイクバックが浅いままスイングしているので、上体が前に突っ込んで強い打球が打てていない。始動が遅くなり、下半身で粘れないので手打ちのようになっているのが不振の要因だと思います」と指摘する。

 坂本とかつてチームメートだった巨人OBも「坂本に限らず、打撃不振になると始動のタイミングが遅くなり、スイングが小さくなる。当てに行くようなスイングで空振りや凡打が増えてしまい、さらにコンパクトな打法を求めてしまう悪循環に陥る。フォームの形にこだわらずシンプルに始動を早くして、強い打球を打つことを心がければ復調への道筋が見えてくるのではないでしょうか。バットをしばらく握らず、下半身を徹底的に鍛える昭和式のミニキャンプで土台から作り直したほうがいい」と力説する。

 心配なのは気力だ。今年の坂本は凡打に倒れた後、淡々とした表情を浮かべてベンチに引き上げる姿が多い。もちろん、内心は悔しいはずだが、張り詰めていた糸が切れてしまうようなことになれば、体もさらに動かなくなる。

 野球人生の岐路を迎えている坂本は、もう一度はい上がってこられるだろうか。

(今川秀悟)

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