
ロックバンド「The SALOVERS」のボーカルとして10代でデビューした古舘佑太郎さん。その後もミュージシャンとして活動する一方、近年は俳優としても活躍の場を広げています。そんな彼の父親は、フリーアナウンサー・司会者の古舘伊知郎さん。日本人ならば誰もが知る有名人の息子であるという事実は、古舘さんにとって大きなコンプレックスとなり、音楽の世界に身を投じた背景にも自身に貼られたレッテルへの反発があったといいます。“二世コンプレックス”とどのように向き合ってきたのか、話を聞きました。(全2回の1回目/後編へ続く)
【写真4枚】父親が古舘伊知郎であることにコンプレックスを感じていた





根こそぎ自分の経歴が嫌
――古舘さんはお父さんが有名人ということに対してコンプレックスを抱えていたと色々なところでおっしゃっていますね。
それこそ昔を振り返ると、やっぱり父親が古舘伊知郎であることとか、いわゆる二世みたいな見方をされることにはかなりコンプレックスを感じていました。周りから「いいね」とか「羨ましい」みたいな感じで言われて余計に沼にハマっていっていましたね。2010年にThe SALOVERSでデビューしたんですけど、バンドを始めてからはますますそう言われることも多くなって……そのコンプレックスを克服しようと思ってバンドを始めたのに、そのせいで余計にそういう目に遭うっていう。当時は、自分が東京出身であることとか、慶應の一貫校に通っていることとか、根こそぎ自分の経歴が嫌でした。
――自分を構成するものすべてが嫌だった。
そうです。まあ、若気の至りだと思いますけど。そういう出身なら、そっちにどっぷり染まってしまえばいいじゃないですか。でもそれもできない。学校に行っても、8割はみんなと同じ気持ちになれるのに、2割は自分だけズレを感じていました。周りは将来テレビ局に入るとか、政治家や官僚になるとか、大手企業に勤めて社長になっていくみたいなことを考えているエリートたちで、僕もその中にいて、楽しいんだけど何かフィットしなくて。
それでバンドを始めてバンドの世界に行ったんですけど、そうすると今度はバンドマンたちの中にいても同じように8割は気持ちがわかるんだけど、2割「違う」っていう扱いをされるっていう。それこそ同世代のミュージシャンは、地方から出てきて夢を叶えようとしているわけで、そこに自分の居場所はちょっとないな、みたいな。だから、どこ行ってもずっと違和感を覚えていたんですよね。