九州と四国以外はまだ地区大会、県大会が終わっていない地域もあるため、ここからは既に敗れたチームの有力選手を取り上げていくが、投手でこの春に大きく評価を上げた印象を受けるのが江藤蓮(未来富山)と鈴木蓮吾(東海大甲府)の左腕2人だ。

 江藤は4月上旬に行われたU18侍ジャパン強化合宿に招集されると、2日目の紅白戦で2回をパーフェクト、2奪三振と見事な投球を見せてスカウト陣にアピールした。続く県大会でも初戦で強豪の高岡商に敗れたものの、6回を投げて3失点、6奪三振と好投を見せている。180cm、83kgという堂々とした体格で、力みなく140キロ台のストレートを投げられるのが持ち味。スライダーもしっかり腕を振って投げることができており、打者の手元で鋭く変化する。貴重な大型左腕だけに、夏もスカウト陣の注目を集めることは間違いないだろう。

 一方の鈴木も1年夏から背番号1を背負って話題となったサウスポー。体つきはまだ細身だが、欠点らしい欠点のないフォームが光る。この春は昨年までと比べて明らかにスピードもアップしており、145キロを超えることも珍しくない。逆球や高く浮くボールが多く、コントロールには課題が残るものの、指にかかった時のストレートの勢いは目を見張るものがある。こちらも県大会では準々決勝で敗れて関東大会出場を逃したが、多くのスカウトが視察に訪れており、注目度は高い。

 野手では桜井ユウヤ(昌平・三塁手)を挙げたい。近年コンスタントに埼玉で上位に進出しているチームで1年春から中軸に定着。昨年夏の埼玉大会でもホームランこそ出なかったものの、7試合で5割近い打率を残すなど活躍を見せた。最大の持ち味は高校生離れした体格を生かした豪快なバッティングだ。春の県大会では初戦で敗れたものの、地区予選では幹部クラスのスカウトが視察した前で、強烈なヒットを放ちそのパワーをアピールしている。サードの守備はもう少し動きに軽快さが欲しいが、投手経験もあるだけに肩の強さは申し分ない。今年は高校生の強打者タイプが少ないと言われているだけに、貴重なスラッガー候補として面白い存在となりそうだ。

 5月17日には関東大会、翌週からは東海大会、近畿大会も開幕し、まだまだ全国で“春の熱戦”は続いていくこととなる。今後もそこで光るプレーを見せた選手について追ってレポートする予定だ。

(文・西尾典文)

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